今年(2015)読んだ本の中から 
     反安倍本 編 
    

去年と同じように、私の読書生活の半分は、「反安倍」、「反知性主義」、「反歴史修正主義」、「反原発」に関する本だった。怒りはおさまらないどころか、安保法制の成立や原発再稼働、政府の沖縄問題への対処などより、憤りはおさまりそうもない。それらの本を読まなければ、ゆっくりと眠ることができなかった。
 この国の中で、かなり多くの人間が、私と同じように考えていることは、SEALDSのデモなどでみるとおりだし、また、本稿後半にあげた、日本の知性と良識を代表する人たちの「反安倍本」にみるとおりである。
 しかし、一方では、安倍のような「時代遅れの軍事国家志向者」、「歴史修正主義者(歴史歪曲者)」、はおそらく、増え続けている。その原因の中心は、NHKはじめ、マスコミの多くが、安倍政府や安倍のような考え方に対して、適切な批判をしないためである(籾井のような人物が、その組織の長ならね!)。
 来年ははたしてどうなるか。私も含め、いろんな気持ちはあっても、何もできない人が多いかもしれないけれど、それぞれの立場で可能なことをやる。まずはそうしようと思う。

本の前に少し解説を。

歴史修正(歴史歪曲)主義:revisionism とは、ある歴史事実を説明する場合、自分の政治的考えに合う、都合のよい歴史断片だけを、かき集めて歴史を捏造することにより、歴史をちゃんと教育されていなかった人々に(多くの日本人はそうです)、歴史の真実から目をそむけさせる輩である。「南京事件はない」、とのたまう渡部昇一や、雑誌「正論」や「WILL」に寄稿する人間たちである。
 (十数年前、同系列の輩の文章を載せた、文藝春秋社の雑誌、「マルコポーロ」は、アウシュビッツはなかったという記事を載せて、世界から(ユダヤからだけではない!)批判を浴び、即廃刊になった。そういう系統の、大小の歴史学者・歴史愛好家全体からすれば、ごく隅っこにいる、ずるい奴らである。) そして、「侵略という言葉には、今のところ定義がない」、と国会で発言した、安倍晋三もまさに、歴史修正(歴史歪曲)主義者である。)
 (厳密にいえば、おそらく安倍は、歴史修正主義者でさえないだろう。だって、昭和の歴史をきちんと知らないようだから。日本の首相にして、国会の中で、「私はポツダム宣言は読んだことがない」、と堂々と言い放つ人間なのだから本当に驚く。。彼は、祖父の岸信介を通してしか歴史の知識はない。そして岸の歴史観は、的外れである。満州事変を含めた日中の戦争を、侵略戦争といわれるのは耐えられない、と岸は言っていたそうだ。また、国民より、「国家」が大切、そう堂々と言う人間である。
 国家が破滅しそうな場合は、そういう言説が成り立つ場合がありうるかもしれない。しかし、昭和10年代の、世界における日本の状況は、けっしてそうではなかった。日本を破滅にしたのは、岸を含む、その時代の権力者そのものである。)

 なお歴史修正主義者でいえば、、アウシュビッツと南京事件とは、いろんな面で異なるが、「----はなかった」と、うそぶく人間は、フランスにも、ドイツにも、日本にもいて、その心性は全く同じものである。今年10月に大阪で泊まった、アパヴィラホテルの部屋には、「南京事件はなかった」という内容の、小冊子2冊が置かれていた。同ホテルチェーンは、全国に何十か所だかあるそうだが、きっとその全てに同じものが置かれているのだろう。近代史をきちんと勉強したことのない人間は、そのバカな内容を信ずるだろう。なお、このホテルチェーンの社長は、安倍の後援会の幹部とのこと。表現の自由は大切にしても、社会的責任のある事業経営者がやることか! あきれて、言葉が出ない。

以下に、今年読んだ反安倍本の題名を挙げておきます。

★★★★ 日本の反知性主義 内田樹編  晶文社 2015

★★★★ 安倍首相の歴史観を問う 保坂正康 講談社 2015

★★★★ 「平和国家」の誕生・戦後日本の原点と変容
                    和田春樹  岩波書店 2015

★★★ 反知性主義とファシズム 佐藤優、斎藤環 金曜日 2015


★★★★ NHKはなぜ反知性主義に乗っ取られたのか 
             上村達男 東洋経済新報社 2015

★★★ 困難な成熟 内田樹 夜間飛行 2015

★★★★ 「歴史認識」とは何か 大沼保昭 中公新書 2015

★★★ 戦前回帰 山崎雅弘 Gakken 2015

★★★★ 日米開戦の正体 孫崎享 2015

★★★ 1937 辺見庸 金曜日 2015

★★★ 偽りの戦後日本 K・ウォルフレン、白井聡 KADOKAWA 2015

★★★ 昭和史のかたち 保坂正康 岩波新書 2015

★★★ 科学者は戦争で何をしたか 益川敏英 集英社新書 2015

★★★ 私の1960年代 山本義隆 金曜日 2015
   (私は学生運動には縁がなかったですが)

★★★ 日本戦後史論 白井聡、内田樹、徳間書店 2015

★★★ 終わりなき危機 日本のメディアが伝えない世界の科学者による福島原発事故研究報告書 H. カルディコット 監修 










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