★★★ 反知性主義とファシズム 佐藤優 斎藤環 
                       金曜日 2015

 知の巨人と、社会学者的精神科医による対談集です。思わず声を出して笑ってしまうような箇所が、いくつもあります。

・曽野綾子について----

佐藤:曽野さんは、カトリックは宣教はしないとか、人に宗教を勧めないとか、そういうことを言ってるんですが、どういう意味なのか私にはさっぱりわかりません。(山本注:佐藤氏はマルクシズムを信奉するクリスチャン(プロテスタント))。
斎藤:彼女はキャラが立った保守論客で、それこそ「お筆先の人」ですから。
佐藤:彼女の言ってることが「キリスト教」だったら、私はキリスト教っと関係ないでしょうね。
斎藤:佐藤さんには彼女と1回対談していただきたいです。
佐藤:いやいや、時間は限られていますから。そういう無駄なことにエネルギーを使いたくない。
斎藤:でも敵は今や80万部ですよ。
佐藤:亡くなれば誰も買わなくなるでしょう。
斎藤:まだまだお元気で意気軒昂ですよ。「引退しない人生」とか言ってるらしいですから。
佐藤:ただ彼女の書いたもので何か残る作品がありますかね。遠藤周作の作品は残るけれども。
斎藤:「残る」という点ではゼロに近いでしょう。
佐藤:スポーツ新聞と一緒でしょう。


・北朝鮮関連で-----

佐藤:北朝鮮はファシズムに非常に近いと思うんですよ。
斎藤:近いというか、そのものじゃないですか!? (
中略)。まあ、クーデターは起きかけたんでしょうけど。
佐藤:実は2013年12月5日の夜に、アントニオ猪木先生に呼び出されたんです。
斎藤:(笑)。北朝鮮がらみですか。
佐藤:ええ。猪木先生は13年11月、北朝鮮に行ってきたでしょう。それで60日間党員資格停止ですから、12月5日の時点では、まだリングに上がれない状態でした。先生が退屈していたようで、私が呼ばれたんです。ちょうどその5日の午前中に張成沢の側近2人が銃殺されました。張成沢も失脚するんじゃないかという説が、韓国発の情報で流れたんですよ。猪木先生は張成沢と会ってきたので。
斎藤:何を喋ったんですか?
佐藤:猪木先生に聞いたら、張成沢は「1月に北朝鮮にみんなで来てくれ」と言ったそうです。日本の外務省の人間も大歓迎すると。なので、私が「その話はともかく、話の中で何か気になることなかったですか?」って聞きました(笑)。そうしたら、猪木先生がうーんって、しばらく考えて、「ああ、そういえば」と思い出して。張成沢に「猪木先生、勇気をもって、よく来てくださいました。あなたの正しさは歴史が証明する」と言われたそうです。
斎藤:(笑)。
佐藤:だから私が、「先生、独裁国の人が『歴史が証明する』って言うときは、政争に巻き込まれて敗れることを予測しているときですよ」と説明しました。

-----以下、ちょっと怖すぎてやめておきます。なお、張成沢は、2013年12月12日、予定通り(?)、銃殺されています。佐藤氏が猪木先生と会ったのは、その1週間前だったのですね。


他に、笑える所ではなく、印象に残った所を、2,3挙げますと------.

・宮崎駿の「風立ちぬ」について

斎藤氏はこの映画をまずまず評価をしているのに対し、佐藤氏は、ファシズムに関する危ない匂いを嗅ぎつけていて、評価しない。佐藤氏のそういう感覚の意味は、私には、よくわかりませんでした。
(別の本で佐藤氏が、自分が最も影響を受けた思想家・宗教家として、カール・バルトを挙げていますが、バルトは1930年代に、ドイツにおいてファシズムに勇敢に戦った、数少ない宗教家です。佐藤氏には、ファシズムに対する、、我々にはちょっとわからない、非常に深い思いがあるのでしょう。この点においても、佐藤氏は現代日本にぜひ必要な人で、末永く重要な論客として、存在し続けていただきたいと思います)。

 この映画が封切られたとき、宮崎氏の姿が、しょっちゅうTVに出ていましたが、(以前から彼の映画が封切られるときは、同じようにTVに出まくるわけですが、ま、それは映画も商売の面があるので仕方ないとは思います)、「風立ちぬ」のときは、自作の映画をプレミアで皆と見終わった瞬間、氏は、感極まって泣く映像が流れました。「あとは引退する」、とおっしゃっていたので、それが理由だったのかもしれませんが、それにしては-----。
 主人公の堀越次郎が飛行機を愛したように、宮崎氏も飛行機をこよなく愛すると聞いてますが----、「ラピュタ」はじめ、氏のすべての映画には、飛行機が優雅に飛び、少女もお化けもみんな、空を飛ぶわけです----、堀越を描いたことで、宮崎氏自身にとっては、アニメ作家もしくは芸術家としての画竜点睛が成ったということなのでしょか。

・村上春樹と河合隼雄との関係について


(以下 作成中)