筋 違 の 家

南側全面をガラスにし、構造材である筋違いを意匠に表した住宅です。
 
 この住宅を設計するにあたって、第1のテーマに立ったことは、なるべく近くの里山の秋田杉を使って、施主が立ち木の伐採に参加して家を造ることである。
 近年、住宅が商品化してしまい建て主と建築用材を供給する里山の距離が遠くなって久しい。それ以前に国産材の住宅利用さえも危ぶまれる昨今、林業界でも地産地消が叫ばれてる。 建て主自らが山の仕事に係わることによって山と街を近づけ、地域材の利用活性化と自然環境の大切さを一般消費者に訴えて行こうとする物である。
 第2のテーマとしては、地産地消型の住宅の意匠に多く見られる従来の民家型住宅からの脱却である。
 地産地消型住宅=民家型ではなく新たな意匠での住宅の提案と、従来からの納まりの意匠をモチーフにすることにより、新しくても廻りの環境に馴染む住宅をテーマとしている。例えば、外壁は下見板張りの意匠をモチーフにディテールを見直した杉板張りとしたり、一文字葺きのトタン張りとすることによって、従来の地域に建つ民家と違和感なく共存する風景を造りたかった。
 第3のテーマとしては、構造材を極力意匠として表すことである。杉材をたくさん使った住宅の中には、仕上材として杉材で表面を覆い、構造が見えない意匠の住宅も多くあるが、力の流れが表に現れていないと構造物の魅力に欠け、木材が構造を支えている力を感じない意匠が木造では貧弱に思えるのである。構造のモチーフとしてはトラス構造としている。