大 森 の 古 民 家

  築130年の古民家をリノベーションしました。
 
 今でも古い農家の建築が多く残る横手市大森地区、今回リノベーションした住宅はこんな山里の一角にある。 
 リノベーションの目的は大きく分けて2つ。1期工事は、明治時代、約130年前に建てられた茅葺き屋根の古民家の再生、改修をする事。2期工事は、古民家に増築された在来木造の2階部分を減築して、大きくなりすぎた住宅の整理、改修する事である。これらの工事を居住しながら行っている。 
 1期工事の茅葺き屋根の古民家の再生では、断熱性能の向上と居住環境の充実を中心に計画を進めた。低い位置に設けられた天井を撤去し、屋根面に十分な断熱層を形成して小屋裏空間を解放し、古い梁組や棟木、貫を意匠として室内に表し、格子を新たに設ける事によって新しいアクセントとしている。 
 外観的には、トタンを被せた茅葺き屋根を撤去して同一勾配の屋根を新設する事により、以前の形状を記憶に残しつつ新しい形態を与えて民家の意匠を再構築している。主屋の周りには断熱緩衝帯としてペアガラスと木製建具で外皮を構成した広縁を設けている。外側に雪囲いを設置できる建具構造にしてあり、冬場の断熱性向上、防風・防雪対策としている。また、雪囲いの不要な夏場は戸袋の中に収納できる。 
 内部の間取は、前の間取をほぼ踏襲しているが、リビング・台所と座敷は、建具の仕切りは残しつつ小屋裏で繋げる事で一体の空間としており、天窓を設けて格子の隙間から外光を取り入れて明るい室内空間としている。また、物置としてしか使われていなかった部屋は寝室として活用し、小屋裏部屋と連結して広がりのある空間を演出している。 
 2期工事は、家族が増えるごとに増築と改築を繰り返された在来木造の2階建てを現在の居住に必要な間取りに減築する計画である。特に、古民家部分との取次部分は何度も増改築を繰り返されおり、雨漏りやシロアリ被害も確認されたので、一部は解体して新たな構造体とした。南側に位置する祖父母の部屋は、工事中の身体的負担を軽減する意味でも手を付けずに残す事として、2階部分を撤去して新たな屋根を設けた。 
 古民家部分の屋根形状をそのまま延長して外観に一体感を持たせ、その取次部分には表から裏山の畑に抜ける通り土間を玄関として設けている。土間にはブリッジが設けられており、古民家部分と在来部分を繋いでいる。また、土間玄関の天井は棟束や貫を新たな材で制作して、屋根面に格子も設け居間や座敷の意匠と共通性を持たせる事によって、一体感を演出している。