天気図


雪囲ひの板のあひだに立ちて咲く八手よ花は花でありたし

降る雪を白衣
ごとくまとひつつ裸木それぞれ人形をなす

天気図は西高東低雪が降る北緯四十度の近くに候

それはもう忘れかけたある楽章雪降る夜に繰り返しつつ

雪達磨をユキダムラと呼ぶをさな子に雪を握りて二つ重ねつ


    
 芋の子にはららご赤く混じりたる煮付け食ひたし母の味にて

     さだまさしの「案山子」の歌に耳立てぬ息子を早稲田へ送りたる頃

     ピーと鳴るサンダル履きて跳ぶうまご出発進行銀河鉄道

     雪の上は雪ばかりなり雪の上に雪降りつづく色
(しき)は空(くう)とや

     ひと冬を休みたるらし歪むままガードレールは雪に埋もれて

     mmmmとハミングで歌ふ牛追い歌死語となりたる馬方、牛方



悼歌四首

忘るべく思へど思ふ過ぎ去りを垂氷
(たるひ)落ちたりきさらぎの昼

賜びし柿の甘さが折りに甦る共にひと夜を酌まむとせしに

若き日を忘れざらめや友の死に秋田県立横手中学校

雪の日は雪降らす雲つきぬけてその上にあらむ友の浄土は


画像自作:ダリア(ガラパレード)