サルビア
をさな子の笑みが頬より零れ落ち千本のサルビア赤く天指す
中空のくぐゎつに触れけむ飛行機雲流れゆきたり楽譜のやうに
暗闇に時計を探すもどかしさいかづちの閃光虚を衝きて消ゆ
新宿のノッポビルにて遅くまで仕事してゐむ夜行性の息子
風が吹くポスター一枚の掲示板数日前のイベント告げゐる
鍵盤におどるミシェル・ルグランの指 音楽は麻薬と言ひし人ゐき
秋の雨静かに降れば聞くピアフ「祖国や友も裏切りませう」
フランス人気取りで唄ふ「ろくでなし」カラオケ廻れ酔ひの寂しさ
枝えだのうれまで咲きし山茶花の蜜に集まる蜂争はず
山茶花の一枝手向けむ風の空に阿しことば棄て放つまで
居酒屋の招き猫のかたちかな日曜の工事場パワーショベルは
消費税増税する党しない党六地蔵が聞く墓地の入り口
錆さびの標識残る町裏をのっぺらぼうが曲がって行きぬ
画像自作:ダリア(サングラティ)