白河以北

作況指数九十八のやや不良白河以北ひとやまひゃくもん

人びとの禍福綯ひ交ぜ出来秋の白河以北ひとやまひゃくもん

天地
(あめつち)のなしのまにまにほかならず白河以北ひとやまひゃくもん

わらび座の芸術村のどまんなか地ビール工場は何故あるのだらう

帰化せしは泡立つ前の日本にてあわだち草も秋の点景


からまつの秋は来にけりからまつの夏の鋭(と)ごころ滂沱たるべし

「落葉松」とふ合唱歌へばいつしかに時雨に濡るる身と化
(な)りてゆく

母あらば八十八齢まなうらに残るは梨剥くささいなすがた

節枉げぬ姿の山よ鳥海は 長銀の株価二円となりぬ

つつがなく雲より出づる鳥海山ほぎごとのべむ初冠雪に

小春日に蜂あつまれる山茶花の盛りを愛でて妻と見てゐる


桜紅葉いてふの黄葉柿落ち葉乾反るを追ひつつ風の精ゆく

雪囲ひ終えれば冬の安堵あり焦げ香ほど良き秋刀魚を食らふ

ヂイチャンと呼びかけて来しをさな声さやけきものの一つなるかな

若き日にただ酔漢の夜ありて 秋田川反ラ・クンパルシータ

霙からたちまち霰またみぞれ「二度逢瀬」とふバス停にあられ

鬼ヶ瀬川鉄橋のこゑ峪のこゑ冬しづまれり亡父
(ちち)のこゑ聞く

初雪の意外に積もるひと日にて斉藤史の歌にしたしむ

雪をはた花とし思へば爛漫の春の伝言鵺からの伝言


画像自作:ダリア(ボニージェーン)