しまく雪
六地蔵かたみにつけし緋の頭巾寒に椿の花ゑむごとく
法要の五体投地にリズムありて三十一(みそひと)文字の韻を思へり
降りしきる雪を掌(て)に受け俯きぬことばを多く持たざる冬は
横に降る喩へのやうにしまく雪別れの一語を奪ひ取りたり
雪の結晶そを知りたるは中学の国語の授業宇吉郎の随筆
渺々とはたまた霏々と雪降れり杉の木末(こうれ)の直ぐなるあらがひ
過去一切忘れ果てたるさまに見ゆ吹雪のなかの桜の裸木は
「お堂っこ」を守る「犬っこ」も雪の像 雪よ浄らに今しばし降れ
小正月の慣ひなりしよ「かまくら」は許されてひと夜子らは遊びし
象潟の沖に起こりし地震(なゐ)ふるふ弟と妹が安否たづね来
ハローキティー、ミッキーマウスの好きな子ら兎のやうに跳びはねる子ら
エコーには男のしるしが見ゆるとふ弥生なかばにぢぢとなるべし
豊かなるハルモニア歌はむ来む春は弥生に生るる三人(みたり)目の孫に
画像自作:ダリア(水すまし)