ダ カーポ


「ニュータウン宝来団地分譲中」幟旗増えぬ売れ残りあれば

建設は破壊ありてや人の住む宅地造ると田圃を抉る

高速道に農地売りたる百姓が農業で農家は食へぬと嘯く

U字溝吊り上げてゐるクレーン車の隣の畑に韮摘む農婦

一つづつ別の時刻を指したまま時計売り場は閉店間近か




   介護といふことの現実つづまりはコロリ地蔵が話題となりぬ

   十三代までは辿りしわがルーツ 終の一句は秋桜の父

   奉安殿ありしあたりよ校庭の木立の落ち葉踏みつつ歩む

   さいかちの莢実触れ合ふさま思ふ北風よりも寒げに鳴るか

   さいかちの大樹を覆ふ雪降りつ立ち往生の弁慶のごとく



ダ カーポ(最初に戻って演奏せよ)スワンよスワン スワンの歌を

クレッシェンド(次第に強く演奏せよ)スワンよ翼をつらねて飛び来

暗譜とは暗記ではなしまなうらに何かを浮かべて歌はねばならぬ

作曲は成田為三の県民歌を《第九》のやうに師走に歌ふ

言霊のことを思ひて声を和す<ハレルヤ><ハレルヤ>異教徒われは


画像自作:ダリア(錦秋乙女)