日常診療で気をつけていること

開業医として、私は次のようなことに気をつけて仕事をしていきたいと思っています。

1. 医学について
 それぞれの患者さんがもっている各病気について、現代の医療として、最善のことを行う。
 具体的には、診療ガイドラインがあれば、基本的にはそれに準じた治療を行うこと(たとえば、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの一般的な病気では、各医学会からガイドラインが出されています)。
 開業医は、毎日(医師としては)一人で仕事をしており、よほど気をつけないと、いつの間にか独断的で、非正統的な医療にずれていく可能性をいつも秘めていると、私は思っています。講演会を聴いたり、医学出版物にはよく目を通しておくなど、医学の動向をよく知っておきたい。

2 専門外の病気について
 自分の能力や、当院の機能を超えた病気については、速やかに専門の医師や病院に紹介します(当然のことですね)。とはいえ、自分の専門以外はすぐ何でも他の医者にまかせるのでは、患者さんも困る場合もあります(時間的にあるいは経済的に)。この辺は微妙な問題がありますが、患者さんとよく相談した上で、自分がみるか、よそに紹介するか決めるつもりでやっています。

3 比較的珍しい病気について
 日常の仕事の上で、珍しい病気も見逃さないように留意して診療しているつもりです。
 開業医は、毎日「よくある病気」だけをみているので、たまに珍しい病気が隠れている患者さんが来た場合、見逃す可能性がないとは言えないと思います。医師たるもの、その辺の機微には特に注意深くあらねばならない、そう思っています。
  (参照:開業してから自分で見つけた比較的珍しい病気(別紙)

4 心と体について
 体に不調がある方を診療する場合、臓器の異常で簡単に説明できないことがよくあります。そんな時は、患者さんの体のことだけでなく、生活面(仕事や忙しさなど)や心理面(現在や過去の苦しみやストレスなど)についても、お話をお聞きして、体調不調の原因を総合的に考えていきたいと思っています。
 このことは医療としてごく当たり前のことなのですが、実際の日本の医療現場では、しばしばおろそかにされていて、いいかげんな薬剤療法がおこなわれていることがあります。
 私は「心療内科医」ではありませんが、こうした医療の基本を、よくわきまえて仕事をしていこうと思っています。

5 生活習慣の指導について
 高血圧や糖尿病など、内科の大部分の病気の治療においては、薬剤もさることながら、日常生活の習慣が予後を大きく左右します。
 塩分摂取、アルコール、タバコ、運動、適切な栄養などですが、これらは患者さん一人ひとりによって、条件がまるで異なります。また、理想論ばかり押し付けても、結局は患者さんを健康的に軌道修正させるきっかけにはならないことも多く、この辺が多くの医師が悩んでいるところです。
 私は、人格の成熟が不十分なので、いまだこの種の仕事は得意ではないと自分では思っていますが、できるだけ患者さんの人生に沿った形で、助言していくつもりです。とはいえ、患者さんに甘いことだけを言っても、結局はその人のためにはならないということも多く、むずかしいところです。

6 社会状勢と経済について
 現代の日本は、いろいろ困難な問題をかかえており、特に地方の経済は、全く停滞しているありさまです。こういう中で、健康保険制度があるとはいえ、医療を受けるにも金がかかりますので、十分な医療を受けられない事情の方々もおられると聞いておます。また、一日10何時間も働き、しかも休日がほとんどないという、過酷な労働条件の中で、精一杯の生活をしておられる方もいます(運送業、店長などの商業者その他)。
 私は高校を卒業するころまでは、経済的にかなり困難な家で育ったので、その方々の辛さをよく理解しているつもりです。だから、医療現場でも、そういうことに配慮していきたいと思っています。
 もし事情がある方は、ぜひ率直にこちらに話して下さい。
 そして、一国民として、一人では非力ではありますが、このままの社会でいいわけがないことを、自分の責任ある言動として、表していきたいと考えています。
 また、医療制度も年々悪化していく中で、自分あるいは当院が、このままのやり方でいいのか、もっと別のやり方をするべきなのか、よく考えていきたいと思っています。
 
                              湯沢内科循環器科クリニック