白皚皚
四層をなす屋根の積雪をスコップできざむ日がな一日
一層目の粉状の雪軽ろければ真冬日の気温と独り諾ふ
二層目は俺が一番好きな雪スコップに載せて投げやすいから
三層目の堅く押された重い雪体重のせてスコップ使ふ
四層目の粗目状の雪足もとが不安定なり砂丘のやうに
雪の嵩高ければたやすく枝つめぬ徒に伸びし白木蓮の
時に疎み時には嫌ひ時に憎み時に恨めど雪は親しも
雪降りき着雪警報発令中ぶるんと電線が雪を払ひき
雪降りき寒の入り日に雪降りき六地蔵の列立ち止まりたり
雪降りき寒鱈の汁塩魚汁(しょっつる)を今宵すすらな酒あたためて
雪降りき千の小かまくら燈を点し天地のあはひに瞬き続く
雪降りき隣の町のマンガ館で《のらくろ展》が雪にまみれき
雪降りき藁火の匂ひ残したる雪よ降れかし遠き日のごと
こぞの秋求めて植ゑしアザレアは雪の下より立てるや否や
墓碑おほふ雪の上にも更に降る彼岸の雪と言へど霏々たり
単純に早春の闇を渫はむとして除雪車のバケットはあるのか
歩数計は六千余歩を示しゐる だんだんとだんだんとひとり
僧の所作見つめてゐたり葬ひに涅槃といふはただ青煙り
俳句的にんげんと短歌的にんげんと共に魍魎となる
画像自作:ダリア(ささめ雪)