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水戸黄門寿司を食べ損なった八兵衛さんの巻

登場人物(19人)

黄門  格さん  助さん  うっかり八兵衛  風車の矢七  お銀
江戸っ子寿司太助  ○○屋中衛門  番頭1、2(B1、B2)
欲深屋悪蔵  ヤクザ1、2、3(ヤ1、ヤ2、ヤ3)
鬼熊悪衛門  家来1、2、3(K1、K2、K3)
ナレーター

※注「○○」は学校名または当地の地名  

■■ 【1】
(水戸黄門のテーマ) (幕前中央から黒子姿のナレーター登場)
さて、一年生の劇団××一座がお送りする演劇「水戸黄門」の始まりです。諸国漫遊中の御老公様一行は今回は花のお江戸へやってまいりました。江戸の町では、悪徳商人の米問屋、欲深屋悪蔵が悪徳奉行の鬼熊悪衛門と組み、偽物の「あきたこまち」を売って大儲けをしていました。そして真面目で正直者の米問屋の○○屋中衛門はおいしい本物のあきたこまちを売ろうとして、逆に欲深屋にいやがらせをされていました。さて、どうなることでしょう。
(ナ去る。下手「日本一江戸っ子寿司太助」看板。上手うっかり八兵衛登場)
ふーーっ。やれやれ、あともう少しでお江戸だ。久しぶりに江戸前の寿司がたらふく食いてえなあ。よだれが出るよ、まったく。おーい、格さん、助さん、ご隠居、早く早くーーー。
(格、助、黄門登場)
おーい、八兵衛、ちょっと待てよ。
さっきまでは、「疲れた、もう歩きたくない」って言ってたくせに。
はっはっは。八兵衛さんは、何か江戸のおいしい食べ物のことを考えて元気が出てきたのではありませんかな。
図星ですよ。ご隠居様、よくわかりますね。
おい、あそこに何か店があるぞ。
江戸前寿司じゃないか。
こりゃあちょうどいい。ねえーご隠居、ちょっと食べていきましょうよ。ねえねえ。
はっはっは。八兵衛さんにはかないませんな。それでは、ちょっと食べて行きますか。
そうこなくっちゃ。(三人寿司を食べに行く)
  【2】
おーい。ちょいと寿司を握っておくれよ。
寿司ならねえよ。
え、何だって?
寿司ならねえって、いってんだよ。
そりゃどういうわけだい。
(ちょっと間をおいて)ふん。うまい寿司を握るにはなぁ、うまい米がねえと、だめなんだよ。日本一うまい米、○○の里でとれたあきたこまちじゃないとな。
たしかにあきたこまちで握るとおいしいお寿司になるでしょうな。
近頃、江戸じゃ、まがい物のくず米をあきたこまちいって売りまくってるやつらがいて、なかなか本物が手に入いらねえ。こちとら江戸っ子なんでえ。まずい米じゃ商売できねえんだよ。
えーっ!それじゃあ寿司は食えねえのかい。おいらもう腹が減ってうごけねえよ。へなへなへな〜。(たおれる)
おいおい、八兵衛、しっかりしろ。(ささえてやる)
しかし、うまい米が手に入らなくて寿司がにぎれないというのは、困ったものですな。
うーむ。ご主人、江戸の町は広いですから、本物のあきたこまちを売るまじめな米問屋さんもいるのではありませんかな?
おう、たしかに!!○○屋なら、昔っから確かなあきないをしてる。○○屋に行けば本物のあきたこまちが手にはいるにちげえねえ。
(急に元気になる)そしたら、寿司がくえる!
なんだ?八兵衛
また、急に元気になったな。
それでは、○○屋さんに行ってってみましょう。
  【3】
(場面転換の間ナレ、○○屋の前)
さて、ところ変わってここは正直一番の米問屋、○○屋中衛門の店です。欲深屋がちんぴらを使っていやがらせをしにきました。
(○○屋の看板。○○屋らなにやら仕事している。下手より欲深屋、ヤ123つれて登場なにやら耳打ちし、○○屋を指してから去る。ヤら○○屋の前で騒ぎ出す)
ヤ1 おい、○○屋、お前の店で、売ってる米には石が入ってたぞ。
ヤ2 おれが買った米には、虫が入ってたぞ。おい、出て来やがれ!
ヤ3 ネズミもはいってたぞ。こんな店ぶっつぶしてやる。(ヤら看板をけったり乱暴する。○○屋ら出てくる)
○○ おやめ下さい。いったいどうしたというのですか?
ヤ1 おうおうおうおう!ここの店じゃ米に石ころまぜて売るのかよ。
ヤ2 おかげで兄貴の歯がかけちまったぞ。
ヤ3 おまけに虫やネズミまで入ってたぞ。
B1 それは何かのお間違いでございましょう。手前どもの店では、正直一番に真面目な手堅いあきないをさせていただいております。
B2 日本一うまいと言われている、○○の里でとれたあきたこまちをよーっく吟味して扱っております。石ころや虫やネズミが入っているなどということは決してありません。
○○ どうぞ、ためしに私どもの米でつくったおにぎりをお食べ下さい。(おにぎり差し出す。ヤら順に食べる)
ヤ1 んーん。こりゃうまい。うまいぞ。
ヤ2 石ころが入ってるなんて、おれたちの間違いだったかな。
ヤ3 そうだな。それじゃあ帰るか。
(3人帰ろうとする。下手より欲深屋でてきて、3人を棒でたたいて去る、3人頭を押さえながら、また○○屋の方にもどる)
ヤ1 とにかくなんでも
ヤ2 こんな店つぶしてやるぞ。
ヤ3 やっちまえ。
B1 な、何をなさるんですか。
2 乱暴はおやめください。
うるせえ。やっちまえ(など口々にあばれる)
  【4】
(とつぜん風車飛んできてヤ1の腕にささる)
ヤ1 いてててててててっ!な、何だこの風車は?!
(上手より矢七、お銀登場) おうおうおうおう、さっきからだまって見てりゃ。まっ昼間っから、弱いものいじめかよ。
ほんとに見苦しいよ!きたないつら下げてさ!
ヤ2 なんだと?なんだてめえらは。
ヤ3 かんけえねえのに出てきやがって!
ヤ1 やっちまえ。
おう!(などと刀を抜いて、矢七、お銀に襲いかかる。お銀は店の人を守る。矢七うまくかわして風車投げる。ヤにささる)
ヤ1 いててててっ!
ヤ2 ちくしょう!
ヤ3 こ、ここはひとまず帰るぞ
ちくしょう!覚えてやがれ!(ヤら逃げ去る)
  【5】
○○ 危ないところをお助けいただいてありがとうございました。
お怪我はありませんかい。
B1 店の前を荒らされましたが、おかげさまでけがはありません。
B2 ぜひお名前をお聞かせ下さい。
名乗るほどのもんじゃございません。
(上手より八兵衛ほか黄門一行登場) おーい。矢七さんにお銀さん。(近くまで来て)何やってんの。
○○ 矢七さんにお銀さんとおっしゃるんですね。それにそちらのみなさんは、どちら様でございますか。
私は、越後の縮緬問屋の隠居光衛門ともうします。こちらは連れのものです。
おう、○○屋さん、久しぶりだな。おれは江戸っ子寿司の太助だよ。こちらのご隠居さんたちに、本物のあきたこまちの江戸前寿司をにぎってやりてえんだが。
B1 それなら大丈夫です。このごろ江戸に偽のあきたこまちがでまわってますが、うちであつかっているのは、本物のあきたこまちです。
B2 まあ、みなさん、立ち話もなんですからどうぞ、中でお休み下さい。
どうもありがとうございます。
こうして、○○屋さんの中で、くわしい話をきくことになりました。
  【6】
(○○屋の中に入り、みんな車座になる。)
○○ どうも偽のあきたこまちを売っているのは、欲深屋らしいんです。
きょう、言いがかりをつけてきたならずものも、欲深屋のさしがねかもしれませんね。
欲深屋の野郎は偽物のあきたこまちを売ってあくどくもうけた上に、その罪を○○屋さんに、なすりつけようとしているんじゃねえか。あの野郎、江戸っ子の風上にもおけねえやろうだぜ。。
B1 きょうお奉行の鬼熊悪衛門様に訴状を出しました。近い内にお裁きがあるはずです。
鬼熊悪衛門だって?
B2 はい。お奉行様の鬼熊悪衛門様です。
(腕組み)なんだかーーーー、いかにも悪者のような名前だなーー?
鬼熊悪衛門と言えばーーー何かと良からぬ噂も聞きますが・・・。
ご隠居様。何か怪しいにおいが・・・。
うむ。(腕組み)。矢七さん、お銀さん、少し調べてはいただけませんかな。
(銀も)は。
  【7】
さて、○○屋は奉行の鬼熊悪衛門に、欲深屋を訴える訴状を出しましたが、何とその夜、鬼熊悪衛門は、欲深屋と、なにやら悪巧みをしています。
鬼   (ふすまの前で、膳を間に向かい合う)ところで、今日は○○屋からうったえがあってのお。欲深屋。おぬしが、くず米をあきたこまちといつわって売った上に、子分どもを使って、○○屋にいやがらせまでしているということであったが。
まさかまさか。めっそうもございません。それは○○屋の言いがかりというもので。
ほう。そうか。しかし、わしも、訴えがあったからには詮議をせねばならんな。そこのところはわかっておろうの。欲深屋。
はあ。わかっておりますとも。(パンパンパンと手をたたく)おい誰か。お銚子をもっと持ってきておくれ。
(お銀、銚子を持って登場) はい、お持ちしました。
なにやら見かけぬ顔だな。
はい。今日から。この店に入りました。
そうか。もういいから下がりなさい。
(お銀、部屋から出て部屋の外で中のようすをうかがう。矢七もいる)
(鬼熊の方に向かい揉み手)へっへっへ。実は今日は、南蛮渡来のカステーラという珍しい菓子が手に入りましてな、鬼熊様に差し上げようと思いまして。
なに。カステーラとな。
これがカステーラにございます。(箱を渡す)
ふむ。どーれ。(箱を開けると中から小判がたくさん出てくる) ほうっ!これが、南蛮渡来のカステーラか。ふっふっふ。気に入ったぞ。おぬし、なかなか気が利くではないか。
気に入っていただけましたかな。では、にせのあきたこまちを売っているのは○○屋ということで、よろしくお取りはからいのほどを。
ふっふっふ。ふ。おぬしも相当のワルよのう。
鬼熊様ほどではございません。
(鬼・欲、声を合わせて笑う。)ふっふっふ。うわっはっは。うわーっはっはっはっはっは。
  【8】
(上手に家来1〜3。下手に欲深屋と○○屋ならんですわっている)
さて翌日、奉行所では○○屋の訴えの詮議が行われました。
K1 奉行、鬼熊悪衛門様ご出座ーっ。
K2 これより詮議を始める。
K3 さて、○○屋中衛門。訴状によれば、欲深屋がくず米をあきたこまちと偽って売った上に、そのほうらに罪をなすりつけようとあるが、それに相違ないか。
○○ はい、それに相違ございません。
K1 欲深屋、○○屋の言うことにしかと相違ないか。
それはとんでもない言いがかりというものです。それどころか、話はまったく逆で、○○屋さんは自分たちがくず米を売ってもうけ、私どもに罪をなすりつけようとしているというのが本当です。訴えたいのはこちらでございます。
K2 それでは、二人の言うことはまるで逆ではないか・・・。
K3 ○○屋、欲深屋、そのほうらの証人はおらんのか?
へい、おりますとも、おりますとも。○○屋にくず米を売りつけられたというものたちがおります。(後ろを向き)おい、出てきなさい。
へい。(ヤども3人出てくる)
K1 何なりと申してみよ。
ヤ1 へい。あっしは○○屋さんに石の入った米を売りつけられました。
ヤ2 あっしが○○屋から買った米には、虫が入っていました。
ヤ3 あっしが買った米にはねずみが入ってました。
B1 あなたたちは、きのう私どもの店に乱暴をはたらいたならず者たち・・・
○○屋。どうやら偽あきたこまちを売ってあくどくもうけていたのは、そのほうだったようだの。(家来に向かい)○○屋をひっとらえい。
は。(○○屋)
B2 これはひどい。私どもは正直一番のあきないをしてきたというのに。
K2 えーい、○○屋、もはや言い逃れはできんぞ!
K3 おとなしく縛につくがよい。
  【9】
(家来たち○○屋を捕らえようとする。そこへ黄門ら登場)
お待ちなさい。
なんだ、おまえは!何しに出てきやがった?!
K1 そのほう!何者じゃ!
K2 詮議の場へしゃしゃり出てくるとは。
K3 ことと次第によってはただではおかんぞ。
私は越後の縮緬問屋の隠居、光衛門と申します。証人を連れて参りました。
おう。俺が証人になってやるが、○○屋さんは、おれの爺さんの代からずーっと真面目な商売をしてた店でえ。くず米を売っていたのは、欲深屋。てめえだろ!
な、なんだと!と、とんでもねえこといいだしやがって!
勝手なことを申すと、そのほうらも、ひっとらえるぞ!
だまらっしゃい!。証人はまだいますぞ。
(銀、矢七出てくる)お奉行の鬼熊様、きのうのカステーラの味はどうでしたかい。
うっ!?きさまはきのうの女!
壁に耳あり、障子に目あり、カステーラと称して賄賂の金を受け取ったところ、しかと見せてもらいましたよ。
うっ、くっ、くそっ、このくそじじいども!たたっ切ってしまえ!
は。
(みな立ち上がる。下手に鬼、欲。その前にヤ・家来身構える。上手には黄門たち。かまえる。) しょうがありませんな。格さん
は。
助さん。
は。
懲らしめてやりなさい。
(格・助)は。
  【10】
(しばらく斬り合う。戦いのBGM家来とやくざ対黄門一行)
もうそろそろいいでしょう。
ええい、皆の者、静まれ、静まれーい。
静まれーい。この紋所が目に入らぬかーーっ。
お、おおーーっ。
こちらにおわす方をどなたと心得る。おそれ多くも先の副将軍、水戸光圀公にあらせられるぞ。
おお、御老公さまだ。御老公様!(口々に叫ぶ)
一同のもの御老公の御前であるぞ。頭が高い、控えい控えい控えおろーっ。(一同、「へへーっ」とひれ伏す。
奉行鬼熊悪衛門、悪徳商人欲深屋悪蔵、両名の者、結託して数々の悪行三昧、さらには、○○屋さんを罪に陥れようとするとは、誠にもって不届き千万。追って厳しいご沙汰が下るであろう。覚悟して待つが良い。
(鬼・欲)へへーー。(ひれ伏し、ふるえる)
ひったてーい。
(家来2人、鬼と欲を捕らえ下手へ連れていく) ○○屋さん、疑いが晴れて良かったですね。
○○ ありがとうございます。
これでまた○○の里のおいしいあきたこまちが食べられるようになりますねえ。
○○屋さん、これからも江戸の人たちがおいしいご飯を食べられるように、まじめなあきないをお願いしますよ。
B1 御老公様。
B2 ありがとうございます。(○○屋ら口々に、御老公様、ありがとうございます)
さて、それでは参りましょうか。
(一同行きかける) おっと。一つ大事なことを忘れた。
何ですかい。八兵衛さん。
え。へっへっへ。太助さん、この○○の里のあきたこまちで、早く江戸前寿司をにぎって、おくれよ。
八兵衛さん。そうしてえところだが、米はあってもネタ仕入れてないから、今はまだ寿司握れねえんだよ。
あっ。そうかー。こいつはうっかりだ。
まあ、八兵衛さんったら!
はっはっはっはっは。
一行 はっはっはっはっは。
はっはっはっはっは。
それでは、参りましょうか。
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