ウスバシロチョウ (シロチョゥ科)  Panassius glacialis glacialis
1994.5.21(田沢)

『それにしても、何という上品な姿だろう。彼女らは目にたつ化粧を一切しない。素顔のうつくしさ、なにげなくのぞかせた襟足の清楚さだ。そしてどことなく弱々しくひっそりと暮らしているかこわれ者のかげりがある。旦那に指輪ひとつ買ってくれとは言い出さぬ、古風な女の風情がある。』      北杜夫は、ウスバシロチョウをこのように表現している。他のチョウたちとは、ちょっと違う。半透明のなんのかざりっ気のない翅、その翅をほとんど動かさずふわふわとただようように優雅な飛びかたをする。北杜夫ならずとも心ひかれる風情を感じる。ウスバシロチョウといえば、なぜか私はにぎやかに田植えをしている情景と、ピンク色のタニウツギの花盛りの情景が目に浮かぷ。5月中旬頃にあらわれて、夏にはもう姿を消してしまう。ヒメギフチョウ、ツマキチョウなどとともに春に一回しか成虫が発生しない仲間で、その時期を逃すともうお目にかかることができない。

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