昭和の歴史、20世紀の歴史をきちんと学ぼう
                    (平成26年1月)
   
------質の悪い国粋主義にだまされたらあかん-----


 (この作文は、医者の仕事は別に、専門外でも私が言っておきたいことです。当面は未完成の状態で、少しづつ仕上げる予定。)
   

 安倍首相が25年の年末に靖国神社を参拝した。それに対し、中韓はもとより、アメリカやEUの政府からも強い非難声明が出された。
 S君、あなたは、日本の首相が、戦争で国のために命をささげた死者に対し、弔いの行為をしてどこが悪い、ましてや、外国から何にかんのといわれる筋合いは全くない、と言ったが、それは独りよがりの、よがり声でしかない。そして、世界の大部分の人たちに理解されるはずもない、袋小路に入った考え方だと思う。

 靖国神社の内容と、その中にある遊就館における、あの戦争に対する見解は、きわめて大きな問題があり、日本の首相がそこを参拝するのは、純粋な国内問題とは到底いえない。
 だからこそ、A級戦犯が合祀されて以降、昭和天皇も平成天皇も一度も参拝していていない。この2人の天皇の行動(非行動)を批判する輩は、昭和の時代を、その時代の善も悪も、自ら全身全霊で引き受けざるをえなかった、その苦悩に、少しは思いを寄せるべきだ。
 
 それをさしおいても、 「現代の問題」は、たとえ国内のことであったとしても、世界と通じているし、世界もお互いに注視している。経済や文化、人的交流がグローバル化したからだ。国や民族がお互いにもたれあっているのはずっと昔からであるし、特に、この二百年ぐらい前からは、諸外国とは海で隔てられた日本といえども、その歴史は他国の歴史と深く結びついている。
 いろんなことを正しく知った上で、あなたが自分の意見をもつなら、それがどういう意見であろうと、私は一定の敬意をもつ。でも、社会の諸問題を正しく理解するためには、その根底にあるもの、それが国際関係であるのなら、各国の歴史、とくに近代・現代の歴史(ここ百年ぐらいの歴史)を、きちんと学んでからにしてほしい。
 そして何よりも、物事を考えるときは、人間としては当然としての、誠実な心構えでいてほしい。
 日本の学校教育では、昭和の歴史をろくに教えなかった(たぶん今も同じだろう)。サザンオールスターズの「ピースとハイライト」の歌詞のとおりだ。
 近代史に無知な人間が多いのに乗じて、巷の書店には、中韓を敵視したり、蔑んだりするような、品の悪い本が我が物顔で、本棚に居座っている。扶桑社から出ているようなものだ。
 安倍のような、歴史を知らない、もしくは無視するような人間が、国の代表になり、すると、バカバカしいことをあたかも真実のように言ってのさばる、自称「歴史学者」、おそらく本流からは相手にもされない人間が、いかにも知ったかぶりをして、国粋主義を謳歌する。本当に嫌な世の中になったものだ。


今年は第一次世界大戦の開始からちょうど百年。第一次世界大戦とその後の戦争は、それまでの戦争と意味が違う。武器が次元を超えて大掛かりになった。飛行機、潜水艦、機関銃、戦車、化学兵器などである。そして国民総ぐるみの戦争になり、兵士でない市民を巻き込むようになった。いざ戦争になれば、もともと武士でも軍人でもない、昨日までは近所の、人のいいお兄さん・おじさんだった人たちが、不本意にも急に銃をもって、見知らぬ誰かを殺しさなければいけないような、そういういや時代になったんだ。
 そうして、戦場ではしばしば兵士と住民の区別がつかなくなり、その結果、住民大虐殺のような愚行が、世界のあちこちで起こるようになった。
 そういうこともあって、ヨーロッパや日本をはじめとして世界の多くの国の人々が、それまでとは全然違う意味において、「平和主義」、「平和至上主義」を心に抱くようになったんだ。


 外国や国際関係に関する意見を述べるなら、最低限の歴史を知ってからにしてほしい。そのうえで、意見を言ってほしい。無知から出た意見は、未来にとって、何もいいことを生まない。
   (以下、作成中)



以上の作文に関して、私が今までに読んだ本

私はこのテーマの専門家ではない。ど素人である。下にあげたのは、有床診療所のまあまあ過酷な医者の仕事の合間に、ささやかながら読んできた本だ。理想的な取り揃えではないかもしれない。その時々に、気まぐれに買い、気まぐれに読んだ本である。
 ある人からみれば、リベラリズム、に傾いているかもしれない(保守主義や国家主義の対立項という意味としてのリベラリズム)。


 保守主義の人間の本も以前はいろいろ読んだが、しばしば非論理的であり、大概は過度に情緒的であり、多くは、現代という時代は、過去といろんな面が変わったことに無神経であって、私は共感を感じなかった。上に書いたような、「現代では、戦争の意味が以前と変わった」、ということについても全く無神経であった。
 そして、T. アドルノの言葉、「アウシュビッツの後に詩を書くのは野蛮である」、という言葉にも無縁であった(アウシュビッツは、日本や日本人には何ら関係ないという、西尾幹二のような見解に関しては、そのうち別項で説明したい。アウシュビッツはドイツやヨーロッパに限った問題ではけっしてない。衣食住がほぼ足り、また、全国民への教育のおかげで基本的な善悪を判断できるようになったと思われていた文明国の人間が、過去の野蛮な人間性からは足を洗ったと考えられていた現代文明社会の人間が、いざともなれば、どんな過去にもありえなかった残虐行為をも、やってしまうのかという、厳然たる事実が問題なのである。

それは、「人間性一般というものに対する深い疑念」なのだ。)

 
中公文庫版 世界の歴史 1975
  13 帝国主義の時代(中山治一) 
  14 第一次世界大戦後の世界(江口朴郎)
  15 ファシズムと第二次大戦(村瀬興雄)

J.M.
ロバーツ 世界の歴史 2003
   8 帝国の時代 
   9 第二次世界大戦と戦後の世界

日本の近代 全16巻 中央公論新社 1999

中公文庫版 日本の歴史 1979
  24 ファシズムへの道(大内力) 
  25 太平洋戦争(林茂)

THE FIRST WORLD WAR:A COMPLETE HISTORY. Martin Gilbert 1994

THE OXFORD COMPANION To WORLD WAR U
 I.C.B.Dear 編

 ジョン・W・ダワー 忘却のしかた、記憶のしかた 岩波書店 2013
 ジョン・W・ダワー 敗北を抱きしめて 岩波書店 2001 
 藤原帰一 「正しい戦争」は本当にあるのか rocking'on 2003
 加藤陽子 戦争の日本近現代史 講談社 2002
 加藤周一 私にとっての20世紀 岩波書店 2000
 加藤周一 「国民的記憶」を問う かもがわ出版 2000
 保阪正康 昭和の戦争と独立 山川出版社 2013
 保阪正康 あの戦争は何だったのか 新潮社 2005 
 保阪正康 太平洋戦争、七つの謎 角川書店 2009
 小森陽一 坂本義和 安丸良夫 歴史教科書・何が問題か 岩波書店 2001

 松本雅和 平和主義とは何か 中公新書 2013
 保阪正康 歴史でたどる領土問題の真実 朝日新書 2011
 栗屋、田中、三島、広渡、望田、山口 戦争責任・戦後責任 朝日新聞社 1994

 岸田秀 三浦雅士 靖国問題の精神分析 新書館 2005
 南京事件調査研究会 南京大虐殺否定論 13のウソ 柏書房 1999
 笠原十九司 南京事件 岩波書店 1997
 ティル・バスティアン アウシュビッツと<アウシュビッツの嘘> 白水社 2005

 高橋哲也 歴史/修正主義 岩波書店 2001
 



    (以下作成中)


安倍総理の靖国参拝に思う