今をときめく二人の知性の対談です。(とはいえ、内容の多くは対談のあとに原稿として書き加えられたものかなと、推測します。チョー忙しいはずのこの二人が、これだけ細かいところまでの対談は不可能。でもそんなことはどうでもいいです。)

現在の日本、世界の問題が私のような素人でも理解できるように、やさしく、しかし、詳しく言及されています。イスラム国、北朝鮮、中国、ウクライナなどについてです。とてもいい勉強になります。

ところで、なぜ本の題名が「新・戦争論」なのか? たぶん世界の情勢に詳しいお二人にとっては、地球規模で見れば、現代もまぎれもなく「戦時状態」であり、佐藤氏の言うように、いま「人類には核を封印しながら、適宜、戦争をする文化が新たに生まれてきている」という、認識があるからでしょう。

佐藤氏は「知の怪人」、いえ「知の巨人」で、ロシア、イスラエル、宗教、哲学、マルクス主義にとても詳しいとともに、元外交官で国や外交の裏側を知悉していて、しかも、五百数十日の「監獄体験」も経験しているという、稀有な経歴の持ち主。(私は当初、彼の本を順次買っていましたが、その後著作の数がめちゃくちゃ多く、今はとても追いかけることができません。)
なお彼は、裁判の中で外務省の主流に裏切られたはずですが、元の古巣の悪口はまず書いていないと思います。
それは正しい。彼は外務省の中で経験し、成長したわけですから、悪口を言えば自分に跳ね返ってくるだけでしょう。

池上氏についても、私は、NHKの「週刊こどもニュース」(という名前でしたっけ)、の頃からのファンです。しかし、彼も著作が多く、TV出演も多くて、とても全部はみていません。
 お二人とも、いろいろと難しい国内外の問題を分かりやすく説明してくれていて、日本に住む人間にとってはとてもありがたい存在です。
あまり無理しないで、健康にもお気をつけて、と言わせていただきます。
なお、余計なことですが、佐藤氏の顔貌、とくに下顎から首のあたりの具合から、「睡眠時無呼吸症候群」の可能性がある雰囲気があります。ぜひ気をつけてください、と言いたいです。

お二人のスタンスは、良心的なものであり、政治的にはリベラル的で好感をもちます。佐藤氏があとがきで引用している、聖書の言葉、「真理はあなたたちを自由にする」、を池上氏に捧げていますが、この言葉は、佐藤氏自身にも捧げられるもの、と存じます。



★★★  新・戦争論   池上彰・佐藤優

        文春新書 830円 2014