熱中症での誤解----健康な人まで、こまめに水分をとらないといけないのか

夏になると、テレビカメラの前で天気予報のお姉さんたちが、「熱中症の予防のために、こまめに水分を取ってください」、と、朝な夕なに、うるさいほどの注意を喚起しています。そんなこんなで、昨日受診された78歳のまじめなおばあさんは、夜おしっこが近くて大変だ、と嘆いていました。

家の中にいる健康な人まで、別にのどが渇かなくても、「水分をこまめにとる」必要があるのでしょうか。いや、そんなことはない、健康な人は、夏でも無理に水分を多くとる必要はない、飲みたくなったときに、飲めばよい、それが私の答えです。

水を飲め飲めという前に、まずは[熱中症になる条件」というものがあります。
その説明の前段階として、熱中症を2つに分けて考えましょう(これは、ハリソン内科学書第19版、2015の記載からの引用です)。1つは、「古典的熱中症、Classical heatstroke」、もう一つは、「作業性熱中症,exertional heatstroke」です。

 古典的熱中症は、病気の人や高齢者・乳幼児が室内で発症するもの、作業性熱中症は、年齢に関わらず暑く過酷な環境で、労働やスポーツを行ったときに発症するものです。この2つを分けて考えると、すっきりわかりやすく理解されるでしょう。

 古典的熱中症になるのは、高齢者・乳幼児か病気をもっている人です。このグループは、体温調節が今一つ問題あり、という点で共通点があります。病気でいえば、代表的には、脳の病気(脳血管障害の後遺症や、進行した認知症など)の人でしょう。そういった方は、発汗を指令する、あるいは口渇を意識するなどの脳の機能が、うまくいってないかもしれず、もしそうなら体温調節が困難です。あるいは、心臓や腎臓などの内臓障害がある人もなりやすいとのことです(内臓による水分調節がむずかしいためでしょうか)。そういう方々は、本人や周囲の人が、細心の注意を払って、熱中症を予防しなければいけません(適正な室内温度、風通しのよい衣服、水分の補給など)。

 他方、作業性熱中症は、健康な人でも、過酷な環境の中では発症する可能性があります。ですから塩分を含んだ水分を、ときどき補給した方がよい。

 なお、十代の少年少女も熱中症をおこしやすいのですが、その理由は、暑いのにガンガン運動しすぎて、しかも限界などについての自己判断力が未熟なためと考えられます。

熱中症の症状

 T度(軽度) めまい(フラフラ)、頭重、皮膚は湿って冷たい

 U度(中等度) 筋肉のけいれん、めまい、だるい、嘔気、嘔吐、体温上昇など

 V度(重症) 意識障害(ぼんやりしている)、立てない、全身のけいれんなど

重症の熱中症は、命にかかわります。
救急車を呼んだ方がよいでしょう。中等度でも、できれば病院を受診した方がよいです。