家庭血圧の測定のコツと注意点

           令和1年12月
     秋田市でのとある会でのミニトーク
     (本稿では、加筆の部分があります)

  

1. 家庭で血圧を測ることが大切

高血圧は万病の元であるし、とても多い。
高血圧を放置すると、重大な病気になりやすい。脳出血、脳梗塞、心臓病(心不全、虚血性心疾患)などです。また、腎臓病や大動脈その他の動脈疾患にもなりやすくなります。検診などで高血圧が疑われましたら、ぜひ医療機関を受診してください。

高血圧は重要であるともに、数も多いのです。中高年(40~75歳)では、男が60%、女が40%で高血圧症です。75歳以上では、男女とも約75%が高血圧症です。

週刊誌の見出しなどで、高血圧は放置しておいて全然問題ない、などのようなことがみられますが、それは全く間違いです。

高血圧症の診断や治療するにあたっては、外来血圧以上に、家庭血圧が大切です。血圧は、気温ですぐ変化しますし、体や心の動揺でも大きく変化します。外来血圧ではしばしば、変に高く出る人がいて(白衣性高血圧)、そういう人は家庭血圧で血圧の状態を判断していった方がよいのです。

一方、逆に、外来血圧が正常であっても、実は家で朝に高くなっている人も多くいます。病院では正常の仮面をかぶっているので、「仮面高血圧」といいます。私の経験では、アルコールの多い方は、朝の血圧が高くなりがちです。(あ、私自身がそうでした)

家庭血圧の目標は、135以下、85以下でしたが、今年4月に日本高血圧学会が出した、改訂ガイドラインでは、125以下、75以下となっています。なお、75歳以上では、135以下、85以下が目標とされています。

. 家庭での血圧測定の注意点

・いつ測るか?

朝と晩がいいです。それ以外に測るのはむしろよくない。朝は起床後30分以内、朝食前、排尿後がいいです。これは早朝高血圧を見逃さないためです。ただし、寒い状況で測るのはよくないので、冬は、部屋が温まってから測ってください。とすれば冬は朝食後になっても仕方ないです。可能な人は、起床前の寝床の中で測るという方法もあります。夜は入浴前がいいです。入浴後は特別に血圧が下がるので、そこでの数字は役立たない。

・どんな血圧計がいいのか

どこの会社のものでもいいと思います。ただし、手首や指で測る機械は不正確を考えられています。上腕(肘の上)に巻いて測るものがいいです。

・何回測るか?

朝なら朝に2回測って、どちらも書いてください。3回以上測るのはよくないと思います。そういう人の中には、高ければいつまでも測りつづける人がいて、それはもう一種のノイローゼですから、私の方から測定を中止するよう言い渡す人もいらっしゃいます。

・毎日測るのか?

できれば毎日の測定がいいです。それが習慣になれば毎日の測定は何ら苦でなくなります。どうしても面倒と思っている人は、別に毎日でなくてもいいです。アメリカの医学教科書には、病院受診前、7日間の測定でもよい、と書かれています。しかし、できれば毎日のように測るのが最善と思います。

・おわりに

家庭血圧の重要性を時代に先駆けて研究し、日本、世界の標準値(目標値)を設定したのは、東北大学の今井潤先生でした。彼とそのグループは、岩手県大迫町(現在は花巻市の一部)の各住民に家庭血圧計を渡してずっと測ってもらい、一方で同時期の脳卒中などの病気の頻度を30年の長きにわたって統計をとり、135以下、85以下を目標にするべきであるという結論に達したのでした。

そのような地道な研究や努力の上に、私たちの健康法の土台が築かれているのです。ぜひできるだけ健康な人生を送りましょう。