永続敗戦論  白井聡  太田出版 1700円 2013

★★★★

 昨年3月に出版された本ですが、不覚にも今まで知らないでいました。
 題名が硬くで、ちょっと買いにくいが、とてもよい本です。日本のすべての人に読んでもらいたい。
 私がよい本とみなすのは、内容はもちろんのこと、文体が気持ちいいこと、不自然な難解さがないこと、そして著者のパトス・情念がこもっていること、それらすべてが備わっているときです。(存命中の日本人では、他に辺見庸を思い起こします。)

 戦後日本を動かしてきた国の中枢の人間たち----政治家、官僚など---が、いかに無責任体系の中でやってきたか、そして一方の国民も、知ってか知らずか、いかにだまされ続けてきたか、これは、70年前の無謀な戦争を仕掛けたときと、そっくりそのまま、何も変わっていない、その構造を明らかにしています。(原発問題一つをみても、それは容易に想像力を働かせることができるだろう。)
 領土問題、北朝鮮問題その他について論じられていますが、基本的にはアメリカに従属している諸々の真実を、権力者たちは国民には明確には説明せずして、頓珍漢な説明でお茶を濁しているわけです。
 その視点は、孫崎享氏(元外務省国際情報局長、「戦後史の正体」や「日本の国境問題」の著者) のスタンスに似てますが、彼らのそのスタンスを私は正しいと思います。けっして「アメリカ陰謀史観」とは言えないはず。

 中身はぜひ本で読んでいただきたいが、白井氏の情念を表す引用句、冒頭での大江健三郎の、そして末尾ではガンジーの次のような言葉を私もけっして忘れることなく、自分なりに考えたり、話したりしていきたいと思います。
 
  「私らは侮辱のなかに生きている」 大江健三郎 
                さようなら原発10万人集会にて

 「あなたがすることのほとんどは無意味であるが、それでもしなくてはならない。そうしたことをするのは世界を変えるためではなく、世界によって自分が変えられないようにするためである」  ガンジー

 私はこの国の政治状況や(与党も野党も選挙結果も何もかも)、社会状況(恥知らずのナショナリストたちが、我が物顔でメディアに出たり、メディアを支配したりしているバカさ加減)の中で、ときおり次のように思うことも一度ならずあった。
 「自分のやれることはもうないのかもしれない、別に今死んでも惜しくもない。もうどうでもいい。」と。
 しかし、白井氏のこの本や、ガンジーの言葉は、初老期の私にも、大きな勇気を与えてくれた。
2014 Aug.