最近の読書から
  2020年春~2022年冬


 この期間はあまり多くの読書はしませんでした。
理由はありますが、ここでは省略します。
記憶に残っているものを以下に記しておきます。

<現代の資本主義への疑問として

  人新世の「資本論」(斎藤幸平著2021年)と、100分de名著カール・マルクス資本論(斎藤幸平著2021年)、あるいはその前年に読んだ、武器としての資本論(白井聡著2020年)などを読んだのがきっかけでしたが、私はもともと20歳頃から、資本主義のマイナス面についてはおおいに気になっていました。

もちろんプラス面も十分に知っているつもりです。現代文明の繁栄も、個人の種々の自由も、資本主義と切っても切り離せないでしょうし、M.ヴェーバーの「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」を読めば、その良さが深く理解できます。
しかし、(マルクスなどが指摘した近代における資本主義の問題性はともかく)、現代における諸問題、資本主義の成れの果てともいえる「金融資本主義」やMMT(現代貨幣理論)のいかがわしさには気持ちが落ち込みますし、経済的格差の異常な拡大、地球環境の破壊などもまた、資本主義と不可分の関係にあると思います。
上記以外には、

・ 資本主義という謎・成長なき時代をどう生きるか:水野和夫、大澤真幸共著、2013年NHK出版新書、860円
両氏の博識はすばらしい。人間の考えとは実は直観が基本になっていることが多いと私は思っていますが、その直観を支えるのは、、視野の広さ、視覚の深さ、つまり、物事を広くかつ深く把握していることと思います。
 水野氏はかねがね資本主義の終焉を唱えているわけですが、この本を読めば、氏がどういう根拠をもってそういう意見になっているのかよくわかります。 

・新しい世界 世界の賢人16人が語る未来 2021
  Y.N.ハラり、E.トッド、J.ダイアモンド、J.スティグリッツ、M.ガブリエル、T.ピケティ、N.クラインなどの文章がわかりやすく載っている。
 コロナの席巻する異常な社会は、むしろそれまで隠れていた現代の諸問題を、表面化させています。一つ一つが勉強になります。 


新世紀のコミュニズム・資本主義の内からの脱出:大澤真幸著、2021年、NHK出版新書

大澤真幸氏の本は、上記のついでにもいろいろ読みました。私の能力ではむずかしい所もあるが、読んで楽しい。

・夢よりも深い覚醒へ 3・11後の哲学:2012 岩波新書
 主に原発の問題について考察されていますが、題名がいい。これはご存知かもしれませんが、ジャック・ラカンからの引用です。私たちは夢から覚めたとき、現実をみていると思っているのが普通です。しかしまれならず、覚めて現実をみている我々は必ずしも、「現実の真実」を把握しているわけではない。むしろ夢の奥に内在し、夢そのものの暗示を超える覚醒、夢よりもいっそう深い覚醒ではなくてはならない----そういう意味です。これだけではわかりにくいが、大澤氏の本を読むと、よく理解できます。

コロナ時代の哲学:2020 大澤氏と國分功一郎氏との対談。
 パンデミックの社会の中で、「自由を縛ること」などにおいて考察されていますが、ややむづかしい。






トランプ時代の世の中について
 あるいは、私たちはどういう時代に生きているのか、について


歴史が後ずさりするとき ウンベルト・エーコ 2021 (原書は2006)

・永遠のファシズム ウンベルト・エーコ 2018 (原書は1997)

 博識・多才のエーコの本は読んでいて楽しい。「薔薇の名前」は、途中で投げ出したが、エッセイは読みやすい。


かなりおかしいな日本の政治や社会の状況について

 ・「自由」の危機 息苦しさの正体 2021
 内田樹、池内了、小熊英二など総勢26人が危機感としての意見を 述べています。
  日本学術会議への政治介入をきっかけにした、学問への自由への危機。多くの人は、そんな問題は自分には無関係だ、と思っているわけですが、日本の80年前の頃をを知っていれば、社会全体への悪影響は底知れないことを知るべきです。

・ 権力は腐敗する 前川喜平 2021
 安倍晋三政権での加計学園問題の真相をその当事者(文部科学省元事務次官)の前川氏が解き明かし、官僚の下僕化、私兵化の現実などを論じています。

・コロナ時代のパンセ 辺見庸 2021
 時代を突き抜ける辺見氏の論考を読むこと。ぐうだらな毎日を送っている自分に、「もっとしっかりせよ、もっと深く考えよ」、とのメッセージをどの本も与えてくれる。




・・