一生に一度だけかもしれないが、あなたのそばで、急に心臓が止まった人に遭遇したら------。何しろ心臓マッサージを一生懸命やってください。人工呼吸はやらなくていいです。そして同時に119番をし、AED(自動体外除細動器)をつけてその指示に従ってください。AEDの指示を待っているとき以外は、片時も絶対に心臓マッサージを中断しないでください。
 
 AEDの普及で、救急隊員などから救急蘇生のやり方をすでに習った一般市民の方々も多いと思われます。その時指導者の方々は、このことを強調したでしょうか。たぶんしてないでしょう。
 私は、AHAの正式な資格はもっていませんし、数年前に、1日だけの講習を受けたり、おととし地元の医師会の講習会に参加したぐらいの者ですが、ずっと前から、自分の周りの人たちには、「救急蘇生を行う場合、人工呼吸はしなくてよい」、と言ってきました。
 心臓外科6年、病院での循環器内科医7年、有床診療所循環器科医20年、一般市民56年という私の経験からの結論です。
 医学的・科学的な理由は省略しますが、2005年の日本のガイドラインでも、「人工呼吸は省略してよい」、となっているようです。私の考えでは、救急蘇生に慣れていない一般市民にその方法を教える場合、何しろ簡素な内容にして、重要なことだけを手短に教えてほしい。それに則れば、「人工呼吸はしなくてよい」、と初めからこう教えてもらいたいのです。
 事実、人工呼吸をしないで心マッサージをした方が、人工呼吸と心マッサージを併用したグループより、社会復帰率が良好であった、という研究結果が、一つならず出ています。
 なお、最近のアメリカ医師会雑誌(2008年3月12日号)には、救急蘇生のプロたる救急隊員でさえ、救急蘇生術において、人工呼吸をしないで心マッサージを


一生懸命やる方法の方が、人工呼吸を併用する方法よりも、社会復帰率が高かった、という論文が出ています。minimally interrupted cardiac resuscitation (MICR)という方法です。
 
 救急隊員でさえ、救急蘇生の初期には、人工呼吸はしないで心臓マッサージを何しろ懸命に行う(もちろん、AEDもかける)、そういう時代が、すぐ目前に来ていると思います。一般市民の方々は、人工呼吸をしなくていいのです。(例外を言えばきりがないので、ここでは省略します)。

なお、救急蘇生の方法は、体を使って覚えるべきですが、インターネットで少しでも知りたい方は、下記などをご覧になってください。
http://ops.umin.ac.jp/ops/jijou/060706nihonnbann.html






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救急蘇生:人工呼吸は不要

平成25年