最近の診療日誌から(2) アスピリン喘息

12月某日、81歳のおばあさんが来院。「5日前から動くと息苦しい」。聴くところによると、5日前に咳と少しゼーゼーする感じがあり、もともと高血圧で通院している近医(専門は消化器内科)を受診、ブルフェンなどの飲み薬4種とホクナリンテープ(喘息などで使う気管支拡張剤)が出され使用していた。しかしその後症状は悪化するばかりで、我慢の末、当院を受診した。

当院には15年以上前に、合計10回ぐらい受診していて、そのうちの2回は、かぜ薬を服用した後、喘息症状が出たので、こちらではアスピリン喘息を疑い、「------なので、今後はかぜ薬や痛み止めの薬、解熱剤は安易に服用しない方がよい」、と説明はしたことがあった。診察では、肺の聴診でピーという音が少し聞こえる、呼吸運動はやや大きめ、酸素飽和度は91%。胸部X線は異常なし。

そうこうしているうちに、昼休みの時間帯に入っていたので、とりあえず、ベネトリンの吸入と、テオフィリンとステロイド(デカドロン)の入った点滴を1時間でやることにした。-----秋田県県南部の医療体制が良好なら、すぐ呼吸器内科医のいる病院に搬送して治療してもらうところだったが、これまで呼吸器内科として唯一頼りにしてきたH病院からは最近、「呼吸器内科医が1人しかいなくなったので、患者さんを紹介しないでください」、という文書が届いていたので、紹介はできない判断した。

患者さんの状態は、点滴が終わっても改善しなかった。私は困った。迷った末、循環器内科医がいるU病院に連絡をとってみた。そしたら、診てくれるとのこと。ありがたい!早速、車で10分のU病院に搬送し事なきをえた。ありがとう、U病院!

私は何を言いたいか。

1. 喘息の患者さんには安易に解熱消炎鎮痛剤を出してもらいたくない。そういう大事なことは、消化器内科医でも十分に知っておいてもらいたい。看板に「内科」とも書かれているはずだから、その知識は当然のことと思う。ちなみに今回の患者さんは、腰痛などで整形外科にも通院していて、そこではソランタールが処方されていた。アスピリン喘息でも、ソランタールは安全とされているので、その整形外科医は正しい処方をしていたわけである。

2. 秋田県県南の呼吸器内科を一手に引き受けていたH病院。そこから急に「紹介しないでくれ」、と言われても、我々は大変に困る。もちろん、患者さんたちは、それ以上に困る。H病院に30年近くいて、呼吸器内科の中心だったK副院長は宮城県のとある病院にH.28年春に転勤していった。何で??

以下は私の邪推かもしれないが、可能性は十分にあることと思う。たしか、この4月にH病院の院長に外科のS先生がなった。呼吸器内科のK先生は、S新院長と同じT大学の同級生だったと思う。霞が関の官僚が、事務次官か何かに昇進すると、入省を同じにする人間たちは、退職する(天下りする)と聞いているが、有名大学が押さえている大病院の院長職の場合、霞が関と同じ状況があるのではないか。

もしそうだったなら、医療界においては早くそんな慣習はやめてほしい。地域医療が崩壊するのです。患者さんたちが本当に困るのです。