脳卒中とは

脳卒中とは、急に起こる脳血管障害のことで、具体的には3つの病気の総称です。すなわち、脳出血、脳梗塞、くも膜下出血です。

現代において、脳卒中はかなり予防できます。自慢するわけではありませんが、循環器内科を中心とした医院をやって30年、まあ自分が長くみている患者さんでは、80歳以下で脳卒中になる人はほとんどいません。
母集団(みている人全体の数)が少ないせいもあるかもしれませんが、脳出血はこの20年記憶がありません。(いや、おひとりの方がおられたかもしれません。)

脳梗塞はいるかもしれないが、5年に1人ぐらいでしょう。この二つは、高血圧や糖尿病、心臓病(心房細動など)、睡眠時無呼吸症候群などの病気を正しく発見し、正しく治療すれば、85歳以下ではほとんど予防できる気がします。

脳卒中の中のくも膜下出血は、残念ながら高血圧とは直接関係ないので、みている患者さんの中で発症した人が少しいます。くも膜下出血は、動脈瘤の破裂で起こる場合が多い。動脈瘤は、詳しい理由は不明ですが、なぜか脳血管の壁が弱くなっている人がいて、そこが次第にふくらんでいきます。それが破けて、晴天の霹靂のように発症するので、とても怖い病気です。肉親にこの病気の人がいた場合は、自分もこの病気になる確率がやや高いので、脳ドックを受けるのがよいでしょう。

さて、脳出血はかなり予防できます。血圧を正常に保つこと、アルコールを飲みすぎないこと、この二つが大切です。

脳梗塞もかなり予防できます。さっきお話したように、高血圧や糖尿病、心臓病(心房細動など)、睡眠時無呼吸症候群などの病気があれば正しく診療してもらうことが大切です。


脳卒中で人生をむだにする理由
では、世の中に、60歳代、70歳代で脳梗塞や脳出血になる人が後を絶たないのはなぜでしょうか。その原因は2点です。

ひとつは検診で高血圧などを指摘されても、医者に行かない人が少なくない。これはまずい。脳卒中になるのは自業自得です。
二つめのも重要です。医者にかかっていても、高血圧が正しく治療されていないことが多い。血圧の治療目標は、おおざっぱに言って、外来血圧が140以下、90以下、家庭血圧が135以下、85以下です。しかし、日本高血圧学会の調査では、正しく降圧されているのは、たしか半数以下です。

高血圧はとても多い病気なので、何科の医者が治療しても、それはよく、事実そうなっていますが、血圧の治療をするなら正しい治療をしてもらいたいものです。消化器その他の病気のついでに高血圧も治療されて結構なのですが、正しい治療をしてもらいたい(つまり、これは医師への要望です。)

正しい治療をされているか、それは患者さんの側でもわかります(詳しくは最後に言います)。
高血圧と同様に糖尿病も正しく治療されてない場合が少なくなく、同じく問題です。私は平凡な田舎の医者です。自分が偉いわけはありません。でも、こう言いたい。患者さんのために、医療の平均的な質はもっと上げられるべきです。

脳梗塞には、心臓病が原因のものもあります。心房細動による脳塞栓です。これは重症の脳梗塞になるので、事前の診断治療がとても大切です。必要な人に、抗凝固剤を投与していれば、大部分が予防されます。

脳卒中の予防は患者も主体的に
ということで、最後に大切なことを。
皆さんが高血圧などの診療を受けている場合、正しく治療されているか、見分ける方法を教えましょう。
ひとつめ。高血圧の人は、自分の血圧が上にあげた数字を平均的に超えてないか、これを知っておく。超えているなら薬を増やしてもらうなど、何らかの手段をもたれるべきです。そして家庭血圧を、その医師が積極的に勧めているかどうかも、大切です。家庭血圧の測定を勧めていない医師は、高血圧の診療を正しくやっていないことが多い(ただしかなりの高齢者では、家庭血圧の測定は不必要です。その理由は省略。)

二つめの見分け方。高血圧や糖尿病がある場合、あるいは高齢になると、心房細動の人が増えてきます。心房細動があっても、動悸などの症状がない人がいます。医師(内科医は)時々、患者の脈をみたり、心音を聴いたりして心房細動を発見するべきです。
近年は医者の診療方法も変わってきていて、脈も触らない、聴診器も当てない内科医が珍しくないそうです。
それはたいへん問題です。

今日の拙い話を少しでも参考になさって、脳卒中にならない人生を送ってください。
ご清聴ありがとうございました。

    湯沢内科循環器科クリニック  山本久

脳卒中の予防
   平成30年9月 秋田市内のある会でミニトーク