2020年2月


★★★★☆
100分で名著 
「ヴァ―ツラフ・ハヴェル  力なき者たちの力 」
阿部賢一 NHK出版 2020年2月    

★★★★☆
力なき者たちの力 ヴァ―ツラフ・ハヴェル
   阿部賢一 訳 人文書院 2019年8月

ハヴェル氏については、名前ぐらいはおぼろげに知っていましたが、今回、「100分で名著」で氏のことを読んでから、その思想と人生に感動しました。なぜか、所々で、涙が止まりませんでした。(私は若いときは涙もろい方でしたが、今は涙とはほぼ無縁です。しかし、逆境にめげない、確たる思想をもち、強く生きた人の解説や自伝を読むとき、たまに不覚にも涙が出ます。たとえば、ネルソン・マンデラや----。)


ハヴェルは1936年のプラハ生まれ。チェコのビロード革命は1968年ですから、この時はまだ32歳だった。(ソ連軍の戦車によって、チェコの民主化は空しく敗れ去った、この時を写真で覚えている人も多いでしょう。ハヴェルは共産主義のチェコで、「金持ちの生まれ」というだけで、ちゃんとした学校に入れなかった。でも、32歳の頃はすでに劇作家だったようです。ビロード革命の時代、すでに彼は反体制活動をしていましたが、その後1889年までの21年間、雌伏の時代を、粘り強く、勇気をもって、命の危険を伴う反体制運動を続けたのでした。(民主化を勝ち取った1989年、彼は国民の圧倒的支持により、大統領になりました。)

半可通の私が知ったかぶりでこれ以上書いても、ボロが出るだけですから、興味ある人はぜひ、「100分で名著」で、ハヴェルのことを知ってください。最後に彼の政治思想を端的に表している、彼自身の言葉を記しておきます。

----私は「反政治的政治」の支持者である。それは、権力のテクノロジーとその操作としての政治や、人間に対する人工頭脳的支配としての政治や、功利と実践と策略の技術としての政治では決してなく、人生に意味を探求しそれを得る方法、人生の意味を守り、それに奉仕する方法の一つとしての政治である。人間的尺度に従う、根源的に人間的な隣人への配慮としての政治である。(太字は、山本が強調)

ハヴェルの思想は、単に共産主義に反抗したものではなく、たとえば今日の日本の政治、、あるいは自由主義を自称している諸国の政治への、根源的な抗議でもあったのです。

★★☆☆☆  昔は面白かったな 回想の文壇交遊録
  石原慎太郎、坂本忠雄 新潮社新書 2015年

 石原氏の本を多く扱った坂本氏との対談。私は、彼の本は「太陽の季節」しか読んだことがないが、同時代の大江健三郎、三島由紀夫などはよく読んでいたので、この本の中身、石原氏からみた作家連中の姿について、とても興味深く読みました。

大江氏とは、ともに新時代の若手作家として、世の中の関心を集めていたわけですが、1960年安保の後、石原は自民党政治家、自慢の顔と弟の人気と弁舌のさわやかさでもって、多数の支持を集めた。その一方、大江は、華麗な文体と、深い思想性、強い社会性でもって、ノーベル賞まで授与された。
 驚くのは、大江は、仲たがいしたあとも、石原の小説を読み続けていて、たまに出会ったとき、大江は「今回の小説はよかった」、などと褒めることもあったことです。それを石原は自慢げにこの対談での述べている。(大江氏の別の本、古井由吉との対談を読むと、大江氏は、日本で現在進行形で出版される小説の、そのほとんどを読んでいたとのこと。もちろん、明治、大正、昭和の主だった小説はすべて読んでいるようです。すごい。もちろん江戸時代以前の、日本の古典もあらかた読んであるはずです。英語、フランス語の小説も、数多く原語で読んでいる。大江は文字通り、真の「文学者」だと思います。)

 石原も、大江も、社会的意見についてはかなりラディカルだが(片や右派、片や左派というかまあ共和主義者)、おそらく人柄は基本的には優しいんだと推測します。文章で激しい意見を書く人間は、多くの場合、穏やかな人柄のことが多い。この私をみればよくわかるでしょう。

2020年1月

★★★★★  マネーの魔術師  野口悠紀雄 2019.5月

 副題は、『支配者はなぜ「金融緩和」に魅せられるのか』です。経済学関連は私にとってとてもむづかしい。しかし、野口氏はいつも我々しろうとに対して、分かりやすく説明してくれます。専門用語をなるべく使わないこと、古今東西の貨幣、金融について、いろんな例をあげて面白く読ませること、などによるものです。
 もちろん、副題にあるように、ここ数年の日本銀行の金融緩和政策を、非常に厳しい目で野口氏はみてきているわけです。
 数か月前、NHK日曜の政治討論番組で、めずらしく野口氏は出ていましたが、司会者が、「最後に、お一人づつ、今後の日本経済への提言を」、みたいな言葉の後、氏は次のようにおっしゃっていました。「この国に住む一人一人のなるべく多くが、日本の現状と未来について正しい認識をもつことが大切です」、みたいな発言でした。
 それは、今の日本の経済や金融の問題ばかりでなく、迫りくる極度の少子高齢化における、社会のあり方、特に社会保障制度への危機感も含めた発言だったと思います。私は、強く共感しました。
 また、その発言は、選挙などで甘い言葉だけを言っている政治家たちへの批判(与党も野党も)、真の問題は避けてバカ番組ばかりやっているテレビ・マスコミ、特に当のNHKに対する強い批判なのではないか、と私は感じました。


★★★★★ 危機と人類  J.ダイアモンド 2019.10月

原題は、 
UPHEAVAL: Turning points for Nations in Crisis.
すなわち、「大変動、危機にある国家の転回点」です。

 氏の本は、「鉄、銃、細菌」、「文明崩壊」など、今までにも少し読んできて、そのけた外れの博識ぶりには感嘆してきました。
氏はすでに82歳ですが、この本は年齢の衰えは全く感じません。(原書も2019年の発行)
 氏の文章は明快でとても読みやすい。まあそれは、日本語の翻訳も優れているからなのでしょうが。

国としてあげられているのは、フィンランド(第二次世界大戦時から現代まで)、チリ(アジェンデとピノチェト)、、インドネシア(スカルノとスハルト)、オーストラリア(英国からの独り立ち)、戦後のドイツ(ブラントの東方喪失認識政策から東西統一まで)のほか、日本とアメリカには2章づつ割かれています。日本については、幕末から明治維新について、基本的には称賛、他方、現代の日本については、苦言と希望が語られています。私にとっては、上記諸外国の危機については、今まで詳しく知らなかったので、とても勉強になるとともに、感嘆もしました。

日本についても、明治維新については共感、現代日本についてもほぼすべてに共感を覚えました。
これ以上長く書いても無理なので、ここでは現代日本の問題についての氏の指摘について、簡単に記しておきましょう。
1. 巨額の国債発行残高、政府の財政政策
2.女性の社会進出・雇用状態
3.少子高齢社会(ただし氏は、人口減少は全然悪くないと言っている)
4.移民政策の消極性
5.東アジア近隣諸国との関係、先の戦争など現代史についての国民教育の貧困。歴史認識とそれにもとづく、中国、韓国への日本政府の姿勢への強い違和感
6.自然資源管理への取り組みでの遅れ(海洋資源など)

などです。氏はアメリカ人、私は日本人ですが、上記5の、現近代史に対する日本政府への批判については、氏の意見に100%同意します。

ぜひ多くの日本人にこの本を読んでもらいたい。氏がこの本を書いた動機は、特に自国アメリカと愛する日本の現状について、とても心配であること、そして地球全体の現状にも強い危機感をもっているから、と私には思えます。危機的な現状を打破するには、国民一人一人の正しい認識が不可欠なのです。


★★★★★ マチネの終わりに
        平野啓一郎 2016

 え? 何で俺がこんな恋愛小説を読むのかって?そんなガラではないだろうって?
 まあ、そのとおりですね。この小説は3年前にすでに買っていたのでした(Kindleで)。ただし、そのときは、10ページぐらい読んで終わっていた。今回読んだのは、去年の秋に映画化されて、それを見たからではありません(見ていません)。12月に湯沢市在住のプロのギタリストの柴田周子さんのギター演奏を当院職員の数人と内輪で聴いたことは関係あります。柴田さんの演奏は以前に医師会の新年会で聴いていますし、おととしの当院開院30周年記念会でもひいてもらっています。しかし、おととしのその会では、会場がざわついていたし、当院職員の人たちの席が、かなり奥のほうでよく聞こえなかったはずで、いつかもう一度ちゃんと聴きたいと思っていたのでした。そのうえ、去年の秋ごろの某新聞で、高名なギタリストのS氏が、ギターっていうのは繊細な表現をする楽器で、聴くほうも注意深く聴かないとその良さがなかなかわからないかもしれない、みたいなことを言っていたこともあり、柴田さんに再度頼んでみたら、快く引き受けていただいたのでした。

演奏前に柴田さんいわく、ある映画、福山雅治の映画のおかげで、ギター演奏が近ごろ人気が出ているみたいだ、というようなことをおっしゃった。私はすぐに、「マチネの終わりに」、とつぶやいたが、柴田さんは何も反応しなかったので、聞こえなかったのかもしれません。

そんなこともあり、、今回は最後まで読みました。話の筋が非常によくできていて、しかも会話や場面のいたるところで、世界の情勢や人生観などについて、ハイレベルな洞察があり、とても楽しい読書でした。たしか3年前に本が出版され、新聞広告も比較的大きく出たように記憶しています。そこではたしか、極上の恋愛小説、と詠っていたかと思いまが、実にそのとおりでした。

(なお、柴田さんのギター演奏は、たった30分で、「聖母の御子」や「魔笛の主題による変奏曲」など、計5曲をひいてもらいましたが、やはり、目の前で演奏してもらうと、表現の繊細さが我々田舎者にもよくわかり、感動しました。職員6人も(日頃はクラシック系の音楽にはあまり縁のないような方々と、私は勝手に推測していますが、)皆さん音楽のすばらしさを心から感じたようでした。



2019年12月に読んだ本、見た映画

★★★★ ジョーカー(映画)
大澤眞幸氏が、新聞紙上で感想を書いていた。共感したので秋田市までみにいった。

主人公は人を殺すのだから(しかも何人も)、共感しない人も多いだろう。たとえいかなる理由があろうとも、人を殺してはいけない。それを踏まえて自分の感想をいえば、これはとてもいい映画だし、私はジョーカーに共感する。

大澤氏は次のように書いていた。「(彼にとっては)、まずは壊さないといけないのだ。作るのはそのあとだ。」

こういう、破滅型の主人公を自分は好きなのだと思う。若いときに感動した、「Bonnie & Clyde・俺たちに明日はない」、あるいは「Butch Casssidy &the Sundance Kid ・明日に向かって撃て」も破滅型だ。こういうのが好きな理由を、自分ではわからない。高校のとき読んだ太宰治の影響なのか、いつも現実社会に不満をもっている陰性の性格のためなのか??

ラスト近く、瀕死からよみがえったジョーカーが、壊れかかった車の上で、体をくねらせ、両手を上げながらゆっくり踊っている姿が、目に焼きついている。イエス・キリストを連想したのは、私だけだったであろうか。

★★★★ 武器よさらば A.ヘミングウエイ

小説の技法の本で、ヘミングウエイの文章があり、英語として読みやすそうだったので手にとりました。(近年は、英米の小説を読むときは----それは年に1〜2冊ですが----英語の原文と翻訳とを合わせつつ読んでいます。本当は原文だけで読みたいのだが、残念ながらそれに見合う読解力はなし。興がのってくれば、結局は翻訳だけ読みます。原文はkindleで簡単に手に入るので便利。)この小説は、昔この映画のラスト5分ぐらいをTVでみていたので、そこだけは知っていた。

戦争(その残酷さ)と、それにかかわる男女の出会い、そして思いがけない突然の別れ。

若いときは恋愛小説はあまり読みませんでしたが、高齢になってきた今はむしろ読みたい。恋愛とは無縁のこんな顔をしているオレだが、こういう小説や映画をみて、せめて心だけは若いままでありたい。

★★★ 井筒俊彦の本
司馬遼太郎によれば、井筒氏は、「20人ぐらいの天才が彼一人に入っている」、という、大変な人です。

井筒氏は私には理解の及ばない方とずっと思っていたので、本も買ったことがありませんでしたが、若松英輔氏などの解説書を2,3冊読んだら、ぜひ、井筒氏の本を直接読みたくなり買いました。
「神秘哲学」 古代ギリシアの哲学の流れを井筒流に読み解いていく。私の理解度50点。
「東洋哲学の構造・エラノス会議講演集」この中の老荘思想、色彩の無い東洋美術などを読みました。私の理解度は、前者は50点、後者は80点です。
「意識と本質」私の理解度30点。私の読書習慣、アルコールの入っている脳ではどだい無理でしょう。

とはいえ、私は井筒氏についてはもうしばらく食い下がりつつ、ついていきたい。5合目にさえ達しないかもしれませんが、少しづづ登りたいと思います。


2019年7月・8月に読んだ本

★★★★日本への警告 ジム・ロジャース談 2019 8月 講談社

今後数十年における、日本と東アジアについての大胆な予測。基本的に私も同意する。たとえば、若い日本人は、早めに日本を脱出した方がいい、という提言、それは理屈上正しいと思う。ネトウヨは怒るだろうが、元来彼ら彼女らは真実から目をそむけているか、無知かのどちらかなんだからね。

★★★★科学者は、なぜ軍事研究に手を染めてはいけないか 池内了著 2019 5月 みすず書房

このテーマに関する本格的な著書です。内容も豊富で、参考文献も多い。倫理性をもった科学者、現代では、以前よりさらに少なくなっているのでしょうね。科学者に倫理を求めても無理なのかもしれないが、池内氏のように、精いっぱいの抵抗はするべきである、と思う。

★★★支配の構造 堤、中島、大澤、高橋著 2019 7月
 SBクリエイティブ

★★★★令和を生きるための昭和史入門 保阪正康著 2019 6月 文春新書

保阪氏の本は何冊も読んでいるが、いつも勉強になる。「入門」でも、私にとっては十分にためになります。

★★★ガンジーに訊け 中島岳志著 2018 6月 朝日文庫

ガンジーについては、その人間性・思想性が大きすぎて、私には評価できない。でも植民地の人間が(英国に)抵抗し、粘り強く行動したことにおいて、自分もアジア人の一人として、深い尊敬の念をいだく。

----------------
ついでに盆休みに読んだ昔の本も

★★★★★老子と暮らす 加島祥造著 2006 1月 光文社

加島さんは、他にも老子について書いていて、以前も私、耽読しました。今回、少し本棚を整理していたらこの本が出てきて、少し読んだらやめられなくなった。老子について書いているが、行間にあふれる孤独感と詩情が何とも気持ちいい。そして、老子の言葉が詩、その前後の加島さんの文章、その二つのリズムについて、私は、A.ランボーの「地獄の一季節」を連想しました(私は原語では読めないから、小林訳からの連想ですが。)

★★★★美しい星 三島由紀夫 新潮文庫

三島の小説は9割がた読んでいますが、私はこれが一番好きです。壮大なディスカッションも楽しいし、狂気か妄想に生きる人間たちもなぜかいとおしい。宇宙の時空の大きさにくらぶれば、一人の人間の人生なんて、とてもはかない。だから、他人からどう思われようと、自分のロマンを究極的に追求した方が生の意味があるともいえる(他人に迷惑をかけない限り)。
 私を含め多くの人からは狂気に思えた、(元来非常に知性的な)三島の晩年と行動-------社会学者の大澤真幸氏の三島についての評論では、この小説と、「豊穣の海」の類似性を指摘していたと思いますが、なんとなく私にも理解できます。

-----------------------
2019年6月

★★★★★ ゴリラの森 言葉の海 
山極寿一、小川洋子著 新潮社、2019.4.

★★★  小泉信三 
 小河原正道著 中公新書、2018.11

★★★ 堀田善衛を読む 
 池澤夏樹他著、集英社新書、2018.10

★★★★ 平成経済 失敗の本質 
 金子勝著  岩波新書、2019.4.

★★★★ 平成時代 
 吉見俊哉著 岩波新書、2019.5.

★★★★ 教育と愛国 
 斉加尚代著  岩波書店、2019.5.

★★★★ 「安倍晋三」大研究 
 望月衣塑子著  KKベストセラーズ、2019.6

----------------------------------------------------------


2019年4月〜5月


★★★★★ 資本主義と闘った男
     佐々木実著 講談社 2019年2月

宇沢弘文の伝記です。私の経済学の知識は高校の教科書以下だが、宇沢氏の著書の何冊かはこれまでも読んできた。氏の経済学における業績については、私の理解の及ぶところではないが、その思想性については共感することが多かった(----経済学は自然科学と違って流派があり、それはとりも直さず、理論の基盤に「思想性」があるからだと思う、たとえば、「貧困」や「格差」や「環境」をどう考えるかなどについて---。)

経済学用語は難しいが、文章は読み易く、できるだけ多くの人に読んでいただきたい本です。

宇沢氏については、理論経済学における大きな業績(ノーベル賞をとっても世界の経済学者が納得したはず)にもかかわらず、その後の変節について---それは氏の思想・倫理観にとって確実にそうであらなければいけなかった変節であるわけですが---「結局は現代経済学を否定した人間」、「ああ、あのミドリの経済学者」みたいに揶揄する輩もいるそうです(たとえば吉本隆明)。まあ、話になりません。なお、吉本隆明は、福島原発事故の後も、「原発は継続していくべきだ」と書いていますが、その理由については、私も笑ってしまいました。「原発も現代の科学技術の中にある。科学は進んでいく運命にあるのだから、それをとどめるのは不可能であるし、正しいことではない」、みたいな理由です。吉本氏を戦後の言論界の筆頭と評価していた人もいますが、私は全く評価しません。だって、氏の言論の中に、頭の冴えを感じたことはありませんから。吉本さん、だったらどうぞ、あなたの隣に原発を作ってください。思想家ならそれぐらいの想像力をもって発言しなければ、話にならないよ!

★★★★★ 市場と権力−竹中平蔵の仕事と生き方 
    佐々木実著 講談社 2013年

  上記の本を読んだついでにこの本も読みました。竹中氏については、小泉政権の中枢にいたころから、大いに疑問をもっていましたが、その後はさらに悪く見え、「ずるいやつ」、と思ってきました。だって自分の政策で、日本の労働環境を変えて(非正規雇用を爆発的に増加させ)、その後、派遣会社のパソナの会長におさまっているのだから。

この本の内容は、竹中氏の半生記をたどり、驚くべき「恥知らず」の実態を描き出しています。みなさん竹中氏の丸い笑顔にだまされてはいけませんよ。能弁につられてはいけませんよ。

★★★★ 
 知ってはいけないこの国を動かす「本当のルール」とは?
   矢部宏治  講談社現代新書  2019
 
  「本当のルール」、それは「密約」なんですね

★★★★★ データが語る日本財政の未来  
      明石順平著 集英社  2019.2.

私は、高橋洋一などの意見、「財政危機」なんて財務省の見かけの作戦だ、国の借金、特に日本政府の借金なんていくら多くても問題ない、という言説に強い疑問をもってきました。私は経済学が門外漢だが、明石氏の本を読めば、やはり、今の状態は「危機的な状態」といえることを理解しました。

★★★★ アベノミクスによろしく  
      明石順平著 集英社  2017.

★★★★  平成はなぜ失敗したのか   
      野口悠紀雄著 幻冬舎 2019.1.

---------------------------------------------

2019年1月〜3月


★★★★ 国家と教養 
   藤原正彦著 新潮新書 2018

数年前に読んだこの人の本、「国家の品格」だったか、文章の端々で、昭和の戦争についての考え方に私は驚いたので、今後は氏の本は買わないと心に決めたのですが、3月に本屋で立ち読みして、よさそうだったのでつい買ってしまいました。
先の本がひどくて読者からの非難が多かったのか、この本の中には一か所以外は「変な歴史認識」はありませんでした。氏は産経新聞系の論者なので、もっと変なところがあるのが普通とは思いますが----。教養----戦前の旧制高校にみられたような、西洋崇拝に由来する教養は力不足であった、と藤原さんは言います。現代に求められるのは、従来からの人文的教養の他、「社会教養」---政治、経済、地政学、歴史など----、第三には、「科学教養」、第四には「大衆文化教養」、とのこと。大筋において私も同感です。ただし、だったらなぜ藤原さんは、そういう歴史認識になったのか不思議です。「大衆文化教養」が十分にあるのなら、産経新聞のような「上から目線」にはならないはず、と私は思うのですが---。

★★★★ 昭和の怪物 七つの謎  
   保阪正康著  講談社現代新書 2018

東條英機、石原莞爾、犬養毅、渡辺和子、瀬島龍三、吉田茂に関する文章で、非常に面白かった。東條と瀬島については、批判的に書いています。私は納得します。保阪氏はこれまで、延べ4000人に会い、証言を得てきたとのこと。すごいですね。

★★★★ 変容するNHK 「忖度」とモラル崩壊の現場    川本祐司著 花伝社 2019.2

★★★  仕事と心の流儀   
     丹羽宇一郎著 講談社 2019.2.

★★★ 安倍官邸VS. NHK  
     相澤冬樹著 文藝春秋社 2019.1.

★★★★ 知の体力 
    永田和宏著 新潮新書 2018

★★★ 危険な思想 狩野亨吉と安藤昌益  
    庄司進著 無明舎 2018


最近読んだ本から
   (2019〜2020年)