其の四 卵石の謎


  平成四年七月に岩崎城跡の千歳公園内の玉子井戸の清掃をした際に、その底の泥の中から大小38個の卵形の石が出土するという興味深い出来事があった。能恵姫の物語に登場する「卵石」はこの井戸の中に沈められていると言い伝えられてきたのだが、これらの石の中に真っ白で光沢のある、まさに卵のごとき石が2個交じっており、これが物語に登場する「卵石」ではないかという声があがった。

井戸から出土した卵形の石

 この井戸は岩崎城の遺構とされており、大正時代頃までは、この井戸の水を掻き出すといった方法で雨乞いが行われていた。

 これらの石も雨乞いの際に、物語にあやかって投げ入れたものであるか、あるいは雨乞いの御利益があった後に「おはたし」の意味で投げ入れたものだろうとされた。また、鉈や鉈の形の石も数個出土しており、これも「木の枝を切っている時家臣があやまって鉈を落とす」という物語にあやかっていることがわかる。

 わたしは直にこれらの石を目にしてきたが、全て真球ではなく、上部が細くなっており卵の形を意識しているようにも見えるが、それほど細長くもないといった感じだった。

 いったいこれらの石は、そしてそもそも「卵石」とは何なのだろうか。


 龍が珠を好むという話はよく知られており、その絵姿も普通は珠を持つ形で描かれる。前述の水波能賣神の像も珠を持つ姿で表されているように、水を司る力が珠に象徴されていると言える。

 この場合の珠は「如意宝珠」と呼ばれる何でも願いがかなう呪力を持つ珠で、丸くて上が尖っており、その先から火炎を上げている。

如意宝珠

 卵石とはまさにこの形ではないだろうか。水を生み出す願いを込めて、井戸に如意宝珠の形を模した石を投げ入れたか。あるいは、珠を好むという龍神に、その形の石を捧げ願いを聞き届けてもらおうとしたのか。これも私の推測に過ぎず、その真相はわからない。

 ただ、次のページで紹介している「能恵姫龍神像」(稲川町川連龍泉寺蔵)で姫が手に持つのは卵石ではなく如意宝珠であることを見逃してはなるまい。


 

 伝説と現実のあわいにあった白い卵石は多くの謎を秘めたまま、他の石と共に再び井戸の底に沈められた。またこの地の水を守り続けるために.....。


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