平成12年1月18日
東京女子医科大学付属第二病院
内科 布田伸一
和輝君は、昨年7月5日に拡張型心筋症による重症心不全状態で心移植を受けるため渡米しました。7月7日に移植待機リストに正式に載り、ユタ大学プライマリー小児医療センターで集中治療が継続されました。しかし渡米後の和輝君の状態は日増しに悪化し、渡米1ヶ月後の8月初旬には生命の危篤状態に陥り、補助循環装置を装着されての生命維持という最悪の状態にまで進行してしまいました。その時奇跡的?にも、日本時間の8月18日にドナーの方が現れ、和輝君に心移植されました。
移植後の経過は、当初よりある程度予想しておりましたように、拒絶反応や感染症、その他、薬の副作用等にあいました。しかし総じて順調に体力は回復し、帰国の目処が昨年末から今年はじめにかけて確認されるようになり今回の帰国につながったわけです。これから〔帰国後〕は、米国滞在中と同じように拒絶反応、感染症、そして薬の副作用等の問題に対して厳重な治療、経過観察が行われます。さらにこれからは移植後慢性期に出現してくる諸問題の早期発見と治療にも全力が注がれます。帰国後は〔時差のため体の状態が米国のときとかなり変わるため)状態が落ち着く2週間程度は週2回の外来通院が必要でしょう。その後週1回に延び、さらに状態が落ち着けば〔2ヶ月後くらい?〕2週に1回の外来通院になると思います。もちろん、このスケジュールは状態に応じて変更されますし、時には入院も必要となると思います。地元に顔を見せに帰られるのは帰国後OKの確認がなされる2週間後ぐらいでしょうか?
ところで、今回の移植は、ドナーの方そしてご遺族の方々には言葉で表せない気持ちであることは当然のことながら、日本で心から支援していただきました多くの方々、また米国ユタ大学の移植チーム、さらには現地で献身的に支えていただいたボランテイアの多くの方々の、これら国境を越えた人々の愛の結集の成果であると思います。私自身も大変感動しています。
平成11年8月24日
東京都内大学病院の渡米前主治医
拡張型心筋症による重症心不全に対して米国ユタ州ソルトレイクシテイのユタ大学プライマリー小児医療センターで日本時間の8月18日午前中に心臓移植が行われた秋田県雄勝町の佐藤和樹君の手術後の状態をご連絡します。
術後は補助循環装置の助けを借りて、何とか生命を維持できていた状態でしたので、移植手術後も集中治療が引き続き行われています。
しかし,術後の経過は全体的にみて「順調」と判断してよく、術後2日目には胸のドレーンチューブを抜去、3日目の8月20日からは意識もかなりはっきりしてきてベッドの上でリハビリ(屈伸運動)が開始されました。5日目の8月22日には人口呼吸器がはずれ、経口摂取が始まっています。
今後も、拒絶反応ならびに感染症、またさまざまな移植の合併症の出現に注意しながら慎重な治療が続けられる予定です。
平成11年6月26日
担当医師
多くの皆様の、厚い善意によりまして、佐藤和輝君(5歳)が渡米して心移植を受けるチャンスが出来上がりました。
和輝君が冒されている特発性拡張型心筋症という病気は、近年の様々な内科的治療の発展により以前は心移植しか手立てのなかった患者さんも助かることが出てきましたが、これはすべての方にあてはまることではありません。
和輝君の場合は残念ながら、内科的治療に十分な反応がなく、残された治療は心移植のみという結論に達しました。
和輝君の現在の心臓の縮む力は15%ぐらい(健康人は70%)で、心臓から出る血液量は低下しており、そのため昨年秋の心不全発症以来、体重の増加は全く認められないばかりか少しずつ低下している状況です。体の抵抗力もかなり低下しております。そして極めて低下した心臓の機能を補うべく心臓は大きく腫れ上がり、現在は体重15kgしかない5歳の小さい和輝君の胸(胸郭20cm)に体重70kgの大人の心臓よりはるかに大きい直径14cmの心臓が引き伸ばされて入っており、そのため肺もかなり圧迫されている状態です。
和輝君は今から1カ月前には心不全状態が重篤すぎて心移植を受けられる可能性すら危ぶまれる状態でした。しかし、その後の強化治療で、現在はなんとか渡航できる状態にまで落ち着きました。もちろんこの状態もいつまで保てるかどうか予断を許すことはできません。
和輝君は、現在、強心薬の持続点滴が必要な状態で、連日集中管理室で濃厚治療が行われています。このままの状態で無事渡米できれば、現地病院(ユタ大学プライマリー小児医療センター)の集中治療室にそのまま収容され、移植待機リストの上位にランクされてドナーの方の善意を待つことになると思われます。
このような重症の和輝君を米国まで移送するわけですから、移送にも危険がつきまとうことは当然ですが、私共はこれまで多くの渡航移植を経験しておりますので、過去の経験を生かして頑張ってきたいと思います。
最後になりますが、皆さまの、御協力に対しまして、心より御礼申し上げる次第です。渡米後も、和輝君の医学的情報は定期的に提供させていただきますので、これからも何卒ご協力の程、宜しくお願い申し上げます。