飛ぶよ 飛ぶよ 綿毛の秘密 2

西馬音内小学校 6年 ぽぽたん
1.研究の目的

 昨年、春になると、ふわふわ飛ぶタンポポの綿毛の秘密を調べました。他の種もタンポポのようにふわふわと飛べたら楽しいだろうなと思い、種に綿毛の代わりの羽根をつけて飛ばそうとしましたが、接着剤などの重さで飛ぶのが難しいことがわかりました。自然の中のものは、人間の手で再現するのがとても難しいです。今年は、自然の中にタンポポのように綿毛をつけて種を飛ばし、仲間をふやしている植物はないか調べてみました。そして、本物の種を飛ばすことは難しいけれど、モデルを作りながら、綿毛のつき方の秘密にせまってみました。

2.予想
 
(1) タンポポの他にも綿毛を使って、仲間をふやしている植物がいるのではないか。
  
(2) 綿毛のモデルを作ることで、飛びやすい綿毛の秘密に近づくことができるのではないか。

3.研究の方法

(1) 綿毛カレンダー作り

 家の前の土手には、6月から8月にかけて、毎年、タンポポによく似た黄色い花が咲きます。(表紙の写真)けれども、くきの長さやつくり、葉の様子などを見ると、タンポポとはちがう植物であることがわかります。この植物は、たくさんの綿毛をつけてそれを飛ばすので、家の中に入ってきて、少し困ってしまいます。このように、タンポポの他にも綿毛を飛ばす植物があるのではないかと、家の周りの植物を調べてみました。

<綿毛カレンダー>
 
4月の雪どけから5月
 土手の雪がとけて最初に咲く黄色い花がタンポポです。タンポポの種の長さは全部で1.5cmくらいで、スケッチのように、3つの部分に分かれています。綿毛(青)は顕微鏡で観察すると、まっすぐではなく、枝のようにギザギザになっています。長く伸びた軸(赤)は、たくさんのすじが入っています。種(黒)は表面がとげとげしていて、おそらく、土に引っかかって、それ以上飛んでいかないようになっているのだと思います。船のいかりのようだと思いました。
 
4月終わりから7月
 タンポポの少し後を追うようにして咲く、小さくてかわいい花がハルジオンです。(右の写真)今まで気がつかなかったのですが、この花も綿毛をつけました。(左図)
 ハルジオンの種の長さは、全部で0.2cmととても小さいです。綿毛(青)もタンポポと同じく枝のようになっています。種はでこぼこしています。軸がなく、羽子板の羽根のような形をしています。とっても小さいのですが、その分、数も多く少しの風でぱっとちってしまいました。土に落ちると探すのはとても難しいです。
 
6月
 タンポポの黄色が目立たなくなってくると、土手のあちこちにコウリンタンポポの濃いオレンジ色の花が咲きます。母の話では、前はなかったのですが、妹が生まれた7・8年くらい前から少しずつ咲き始め、今年は土手のあちこちに咲きました。咲いている期間は1ケ月くらいと短いです。本で調べると、明治時代に日本にやってきた、「帰化植物」の仲間だそうです。
 コウリンタンポポの種の長さは、全部で0.5cmと小さいです。綿毛(青)は、ほうきのように種からまっすぐ伸びています。軸がなく、種にはしましまの模様がありました。
 
5〜7月
 オニノゲシは道のはじっこにいて、どんと存在感があります。トゲトゲの葉のせいかもしれません。周りに仲間はあまりいません。1つ見つけると、次のオニノゲシまで100m以上はなれています。先に紹介した3つの植物は、すぐ近くに同じ仲間がいました。オニノゲシは大きいので、仲間と一緒に育つのは難しいのかなと思いました。
 オニノゲシの種は全部で1cmあります。綿毛は木の枝を折ったように、ところどころにぼこっとしたものがあります。軸はなく、種にはしましまのもようがありっます。コウリンタンポポやハルジオンと同じタイプですが、綿毛の長さがとても長く、布団に入っている羽毛のようにふわふわしていて、手にくっつきやすいです。飛ばすよりは、他の生き物にくっつけて種を運ぼうとしているのかもしれません。だから、今までの植物とは違って、近くに仲間がいないのかもしれません。
 
6〜8月
 ブタナは、研究の目的で紹介した植物です。6月になると、家の前の土手がブタナのおかげで黄色になります。とてもきれいなのですが、本で調べると、これも「帰化植物」で、ブタナという名前は「豚のサラダ」という意味なのだそうです。土手の植物をそのまま伸ばしっぱなしにしておくと、虫がたくさん増えて大変なので、3週間に1回くらいの割合で、近所の人たちが草かりをします。かられても、すぐにくきが伸びてきて、花を咲かせるので、他の植物よりも家の前の土手に合っているのかもしれません。ハルジオンは一度かると、なかなか育ってきません。
 ブタナの種の長さは全部で2cmあります。タンポポよりも大きいです。綿毛(青)はまっすぐになっていて、他の綿毛とは全く違います。手で触るととても張りがあって、固い感じがします。軸にはたくさんすじがあり、タンポポと同じつくりでした。種も表面がトゲトゲしていて、タンポポとよく似ています。全体的にタンポポよりもごつごつしていて、一緒に飛んだらタンポポの方が負けそうな感じでした。
 
6〜8月
 アレチノギクは、ノゲシとよくにていますが、もっと小さくて花の数も多いです。道路のはしに咲いていて、背たけは、30cmくらいと、高くありません。綿毛もとても小さいです。
 アレチノギクの種の長さは全部で0.2cmと、とても小さいです。綿毛は植物の根のように、全てつながっていて、毛の数が多いです。軸はなく、種は細長いピストルの弾のような形をしています。一つの花にたくさんの種が密集していました。

 家の周りには、種に綿毛をつける植物が、タンポポの他にもたくさんありました。綿毛カレンダーを作って気付いたことを紹介します。

 
○ 全ての植物が同じ時期に綿毛を飛ばすわけではない。

 タンポポとコウリンタンポポは咲く時期を集中させ、他の花の盛りと少しずらすことで、仲間をたくさん増やす作戦をとっているのではないでしょうか。

○ 長い期間、次から次へと花を咲かせる種類もある。

 ハルジオンとブタナは、他の種類に比べて、花をつける期間が長かったです。特にブタナは、人に刈られてもすぐに新しいくきを伸ばして、次から次へと花を咲かせていました。だから、外国から来たのに、日本でもたくさん仲間をふやすことができたのだと思います。

○ 綿毛のはたらきがちがうのではないか。

 綿毛は全て、「ふわふわと種を飛ばすためにある」と、考えていましたが、顕微鏡を使って形や付き方、毛の特徴を調べていくと、飛ぶのですが、少し働きが違うものもあるのではないかと思いました。オニノゲシとアレチノギクは、飛ばすよりも動物や人にくっつけて種を運んでいるのではないかと思います。このタイプは、少し離れたところに仲間がいました。この種類だけ、人間が嫌いだからと特別に抜いているとは、考えにくいです。綿毛の長さを長くしたり、毛の数を増やしたりして、くっつきやすくしているのではないでしょうか。
 

 綿毛の観察から、それぞれの植物が仲間をふやすために、オリジナルの工夫をしていることがわかりました。

(2) 綿毛モデルつくり

 綿毛を調べていて、疑問に思ったことがあります。それは、軸があるタイプと軸がないタイプの2種類があることです。これも、仲間をふやす工夫の一つだとすれば、それぞれ、どのようなよいところがあるのか、調べてみました。 

<綿毛レース>
 
 綿毛のつくりがちがうと、落ちる速さにちがいがあるのではないかと考え、それぞれの植物の綿毛を下敷きに乗せ、同じ高さから一斉に落とす実験をしました。何回か繰り返し、どの綿毛がふわふわ浮いていられるか調べました。その結果、軸があるタイプが落下傘のようにゆっくりと落ちました。
 
<綿毛モデルつくり>
 
 原因を調べたくて、落ちる様子をカメラで撮影しようとしましたが、小さすぎてよくわかりません。そこで、綿毛のモデルを作り、落ち方の違いを調べる事にしました。
 
○ 材料  

  • クッション材(種の役割)
     昨年は種に接着剤をつけましたが、接着剤の重みで種がうまく飛ばなかったので、羽根やストローを刺しやすい、クッション材を使いました。

  • ストロー(軸の役割)  

  • 羽根(綿毛の役割)
 
 
a) 羽根の枚数と落下の様子
 
 去年の実験から、種の重さと綿毛のバランスをとらないと、うまくいかないことがわかったので、何枚だと安定して飛ばすことができるのか、調べました。

羽根の枚数 落下の様子
1枚回転なし。とても速く落ちた。
2枚回転なし。とても速く落ちた。ただし、鳥の羽根のように真横につけると、ゆっくりと落ちた。
3枚回転あり。ゆっくり落ちた。
4枚回転あり。ゆっくり落ちた。
5枚回転あり。とてもゆっくり落ちた。
6枚回転あり。とてもゆっくり落ちた。
7枚回転あり。ゆっくり落ちた。

 
 ○ 実験から気付いたこと
  • 羽根の枚数が多いほうが、より、ゆっくりと落ちる。
  • 7枚以上にすると、多すぎてバランスが悪くなる。
  • ゆっくり落ちる場合は、まっすぐではなく、横にくるくると回転しながら落ちてきた。
 *実験の結果から、モデルの羽根の枚数は6枚にすることにしました。
 
b) 軸ありタイプと軸なしタイプを比べる
 
 種に直接羽根をつけた軸ありタイプと、ストローで軸をつけた軸ありタイプを作り、飛び方を比較しました。
 軸があった方が重いので、速く落ちると予想したのですが、実験は何回やっても軸なしの方が速く落ちました。軸ありモデルは、横に回転しながら、振り子のように左右にもゆっくりと揺れながら落ちてきました。軸なしタイプは、回転しながら落ちますが、落ちた時にひっくり返って、種が上に綿毛が下になることがありました。軸ありタイプは、落ちた時に必ず種が下になります。
 
○ 綿毛モデルの実験から考えたこと

 軸がないことで、綿毛が落ちる速さが速くなりますが、その分、綿毛が種を守るクッションのような働きをしているのではないでしょうか。なぜなら、実際の種を観察すると、軸なしタイプは、種に対して綿毛の長さが長いタイプのものが多かったからです。
 もう一つの軸のあるタイプは、綿毛をクッションのように使うことができません。けれども、綿毛をパラシュートのように使い、落ちる速さを少しでもおそくすることで、地面に落ちた時に種が壊れないように工夫しているのではないでしょうか。

 

4.研究のまとめ

 今年の研究から、綿毛には、毛を長くしたり、毛の数を多くしたり、軸があったり、無かったり、色々なタイプがあることがわかりました。このような綿毛のつくりには、それぞれ仲間をふやすための理由があることがわかりました。小さな植物が、一生懸命に生きるために工夫しているところが、すごいなと思います。この研究を通して、小さな綿毛にかくされた大きな秘密を知ることができてよかったです。今後の課題として、綿毛の長さと種の落下の仕方の関連性について、調べてみたいです。
 他の植物にも綿毛と同じように、生きるための秘密がかくされているかもしれません。これからも、小さな植物の大きな工夫を調べていきたいと思います。